時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

2005-01-01から1年間の記事一覧

山で空を見ながら考えたこと

12月中旬から1ヶ月間、アンデスの山々ではアブが大発生します。 そうとは知らない9年前、夫と二人でお気に入りの山、ペリートモレノ岳へお正月登山に出掛けました。登山口の駐車場では何でも無かったのに、いざ登り始めると、いったい今まで何処に居たのか?…

焼き物展示会を終えて思うこと

今年も多くの方の御支援のお陰で、ブエノスアイレスの日本庭園で、焼き物展示会を開催する事が出来ました。 昨年に比べ、日本庭園への入園者が少なく、少し寂しい気もしましたが、それでも友人や知人が、家族や友人連れで、目眩のする様な猛暑の中、バスや地…

展示会

一つの重さが30kgはゆうにある大きなスーツケースが3個。その他に着替えや洗面用具、お土産を詰める登山用リュック。 アルゼンチンへ来た時も、一時帰国した日本から戻ってきた時も、こんな大荷物にはなりませんでした。 「ふ〜」 私は期待と不安の混ざった…

気持ちの持ち方を変えるということ

つやつやと白い蕾を膨らませ、一番に春の訪れを告げていたネコヤナギも、今では緑の葉を風に揺らしています。 のうじょう真人も、やっと新緑の緑の絨毯に覆われ、一面のタンポポの花が、太陽を浴びながら鮮やかに黄色く光っています。 スモモとサクランボの…

雨は緑から生まれるということ

「ビュン、ビューン」 時々、突風が吹き付け、車が微かに震えます。禿げ山が続く風景の中では、外でどの位の強風が吹いているのかは分かりませんが、運転する夫は、ハンドルを取られない様に緊張しています。 ボルソンから南へ約180km。お隣のチュブット州の…

思いを受け取るということ

毎朝の楽しみが増えました。 「おはよう。」「大きくなってね。」 朝の散歩の時、私は76本の秋田杉の苗達に声を掛けながら、1年後、10年後、100年後の“のうじょう真人、秋田杉の森”を心に描きます。 秋田県人会さんとアルゼンチン花卉協同組合理事猪狩氏のご…

全ての答は自然にあるということ

パタゴニアで一番寒い筈の6、7月。今年は雪の降った日はあったものの、殆どが霜柱も立たない程の暖冬でした。ところが、8月に入ると、雲の低く立ちこめる、どんよりとした毎日で、真冬に逆戻りした様な寒さが続きました。9月にはいっても厳しい寒さは相変わ…

アカゲラからのメッセージを受け取れたということ

「キュイン、キュイン、キュイーン」 弓を引くような乾いた独特な声。続いて「コンコンコン、コーン」と、農場中に響く木をつつく高く澄んだ音。 今年も私の大好きな“アカゲラ”がやって来ました。迷惑だと分かっていても、驚かさない様に気を付けながら、私…

答えは見つからないと言うこと

外はまだ薄暗8時半。たっぷりと時間をかけたマテ茶とパンの朝食を終え、私は日課の手洗い洗濯を始めていました。その時 「おーい。子犬が来てるぞ。」 暢気な夫の声が玄関から聞こえてきました。濡れた手のまま玄関へ行くと、愛犬パク邸(玄関横の茂みに置い…

作る楽しみがあるということ

ぷくっ。ぽくっ。 2日前に仕込んだ「どぶろく」が、元気にかわいい音をさせています。かぶせてある布をそっとめくり、「生きてるんだなあ〜」としみじみ感じながら、飽きずにどぶろくの発酵を見つめます。 私はお酒が飲めません。チョコレートボンボンを食べ…

全ては土に還るということ

5月からずっと雨、雪、曇りの湿った天気が続いていました。温暖化、オゾンホールの影響か、パタゴニアらしいキリリとした寒さを感じられない毎日でした。でも、昨日は久しぶりの快晴。すると、放射冷却現象で気温は下がり、全てが凍り付きます。そうなると夫…

のうじょう真人に導かれたということ

荷物の整理も井戸掃除も終わり、何とか生活出来る様になったものの、私の不安は大きくなっていました。更に気分転換にと林の先300m程の所を流れるケムケムトレウ河へ散歩に行って、想像もしなかった光景を見たのです。川沿いはゴミだらけで、そこに勝手に無…

エルボルソン生活の始まりのこと

ネコチアには8家族の日本人、日系人の方が住んでおり、とても親切にして頂ました。3ヶ月のネコチア生活でしたが、お陰で私のアルゼンチン暮らしがスムーズに始まったと感謝しています。 「元気で頑張って」「いつでも遊びに戻っておいで」 優しい言葉に送ら…

エルボルソンに辿り着くまでのこと

広いアルゼンチン、パタゴニアでの土地探しには車は必需品です。夫は先輩の助けを借り、フランス車プジョーのピックアップを購入、私の運転免許も取れ、いよいよ未知のパタゴニアへ向け土地探しの旅に出発する事になりました。 車が思いの外高く、軍事金の乏…

アルゼンチン移住者となるまでのこと

20代後半まで、海外に全く関心が無く、言葉も習慣も違う国に行く勇気も無く、当時3年もつき合っていた恋人(現夫)から、アルゼンチン移住の為、開発青年の試験を受けると聞いた時も「それじゃあ、お別れだね」と、自分がついて行くなんて事、考えもしません…

物を活かすということ

写真は冬の今、大活躍しているドラム缶薪ストーブです。このドラム缶、元々は輸出用の蜂蜜200リットルを詰める物です。アルゼンチンの最初の3ヶ月は、夫が養蜂実習したブエノスアイレス州ネコチア市に住みました。田舎暮らしと決めていた私達は、車でテント…

全てが繋がっているということ

「トオフウって、不味いわね」 マリータに話しかけられた時、「不味い」という言葉から「トオフウ」が「豆腐」だと直ぐには気付きませんでした。 「どうやって食べたの?」「チーズみたいにパンに挟んで」「うう〜ん・・・」 確かにここでは豆腐のことをQues…

冬の自然から元気を分けてもらうということ

今日は雨。昨日も一昨日も、その前も、マジン村に雨が降り続いています。 時々アンデスの谷間からゴゴーッともの凄い風が、秋の名残の僅かに残っていた黄葉したポプラや柳の葉、枝の高い所に付いていたりんごを道連れに吹き抜けて行きます。 私の大好きな大…

手間を掛けるということ

日本では新緑の美しい季節、ここパタゴニアでは秋。のうじょう真人は黄金色に染まっています。ポプラ、リンゴ、スモモ、楓、ライラック、柳、樫、白樺・・・殆どの落葉広葉樹が黄葉しています。それは透き通る様な黄色だったり、オレンジに近い黄色だったり…

贅沢に暮らすということ

「うひゃ〜」「おおー」 4月に入ってから1日1回は歓喜の声を上げています。 いよいよ、きのこ狩りの季節が始まりました。のうじょう真人の林では、四季を通じて数種の野生のきのこを楽しむことが出来ます。そしてこれから6月までは、ヌメリイグチダケがニョ…

野草を美味しいと思えるということ

のうじょう真人の自然の恵みは出来るだけ食卓にのせる様にしています。 ネマガリタケの筍、季節のきのこ、野草の葉や新芽、半野生化した菊芋、チヂィビア、コンフリ、チャイブ。 そして、誰もが驚くほど大きく沢山出ているタンポポ。花の酢の物は最高に美味…

自然の恵みを分け合えるということ

「夏も近づく八十八夜〜」 誰も居ないのを確かめて、調子と音程の外れた歌をいい気持ちで歌いながら、初夏、ハッカの新葉を摘み取るのが、昨年までの私の行事でした。 のうじょう真人の西はずれは小さな谷になっていて、小川が流れ、その脇の沼地にハッカの…

自然の営みに参加するということ

のうじょう真人には1ha程のハゲ地がありました。前住人がジャム用木イチゴの栽培の為、全ての木を切りトラクターで耕し、結局果実の値が下がったので、ほったらかしにしていた土地です。木が無いので夏でも霜が降り、地表を覆う緑も無いのでカラカラに乾き「…

種を播き続けるということ

2月8日、この時期には珍しくまとまった雨が降りました。カラカラに乾いていた大地がぐん、ぐぐんと雨を吸っていき、木も草も久しぶりの天のシャワーにほっと一息吐いています。湿気が無いので、木陰では涼しいのですが、直射日光は“強い”を通り越して“痛い”…

2005/01/22  共に生きるということ

カラカラに空気が乾き、雨の降らないこの季節は冬用の薪の準備に忙しい毎日です。 その日、私と犬の「ぱく」は、いつもの散歩コースを外れ、立ち枯れの木を探しながら林の奥へと進んで行きました。冬には葉を落とすニレも柳も、今はざっしりと葉を付け、林の…

土に還るということ

パタゴニアのこの季節特有の強い西風が吹くと、のうじょう真人のロサモスケータの花びらがヒラヒラと風に舞って飛んで行きます。ハート型のピンクの花びらが大地に舞い落ちるのを見ると、私は4年前、6年ぶりに一時帰国した日本を思い出します。時は4月。校庭…