時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

土に還るということ

パタゴニアのこの季節特有の強い西風が吹くと、のうじょう真人のロサモスケータの花びらがヒラヒラと風に舞って飛んで行きます。ハート型のピンクの花びらが大地に舞い落ちるのを見ると、私は4年前、6年ぶりに一時帰国した日本を思い出します。時は4月。校庭、神社、公園、いろんな場所を満開の桜が彩り、私は久しぶりの日本の春を満喫していました。
そして散り始め。
小さな風にさえ桜は「花吹雪」の言葉通り、花を散らしてゆきました。それを「哀れ」とか「儚い」と感じる人もいますが、私はいつも「綺麗だな。素敵だな」と思っていました。でも、4年前は違いました。「可哀相」と感じたのです。それは散った花びらがアスファルトやコンクリートの上に落ちて行ったからです。桜が植わっている所は土でも、周りはアスファルトの道。あんな上に散り積もった花びら達がとても哀れで可哀相でした。
マジン村にはアスファルトの道はありません。でも、「道路をアスファルトに」という運動が始まっています。
何のために?
動物も植物も生きることは出来ず、雨も雪も吸収出来ず、気温を上昇させるだけの道を。のうじょう真人では土の上に舞い降りた花びら達が土に還り、また新しい命を育んでゆきます。私は車で快適に速く走る事よりも、そんな命の移り変わりを見つめ、大切にしてゆきたいと思っているのです。