時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

アカゲラからのメッセージを受け取れたということ

nojomallin2005-08-27

「キュイン、キュイン、キュイーン」
弓を引くような乾いた独特な声。続いて「コンコンコン、コーン」と、農場中に響く木をつつく高く澄んだ音。
今年も私の大好きな“アカゲラ”がやって来ました。迷惑だと分かっていても、驚かさない様に気を付けながら、私はアカゲラを追って林の中を移動します。
木に垂直に止まり、頭を前後に激しく振って幹をつつく姿。パタパタと力強い音で羽ばたく姿。何度見ても迫力があり、興奮して体が奮えます。
アカゲラがやって来る度「ここにずっと居て。ここで巣作りして。」と願うのですが、いつもどこかへ飛び去ってしまい、数日は姿を見せてくれません。
周りに家がどんどん建ち、木が切られA騒音、人工音も増え、時には車の排気ガスの臭いさえ漂ってくる事もあり、「これからどうなるのか・・・」とうんざりし、せめてのうじょう真人だけは自然に還ろうと、種を播き続けています。でも、今年も挨拶に来てくれたアカゲラ達が、またどこかへ飛び去って行く姿を見送りながら「はっ」と気付いたのです。
彼らがより多くの時間を過ごす場所は、ここ“のうじょう真人”では無いのだと。まだまだ彼らの安心できる場所は残され守られているのだと。「あと何年、この自然が保っていけるのか!」「みんなお金と便利さに目が眩んで、木を切りすぎている」「人や車や雑音ばかりが増えていく」「砂漠になってしまう」
考えれば考える程落ち込み、不安でたまらなくなる時もありましたが、アカゲラ達に「悪い面ばかりしか見ていないんだね。強迫観念が強いとロクな事はないよ。そんなに心配しなくても大丈夫。僕たちは毎日を楽しんでいるよ。」と教えられた気がしました。
「落ち込むのは止めよう。私に出来る事、信じる事を諦めず、楽しんでやって行こう。それが自然の法則から外れていなければ、絶対大丈夫。心を柔らかく、温かく持つ事が大事なんだ。」そんな当たり前の事を改めて感じました。
「キュイン、キュイーン」
遠くでアカゲラ達の声が聞こえています。