時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

全ては土に還るということ

nojomallin2005-07-23

5月からずっと雨、雪、曇りの湿った天気が続いていました。温暖化、オゾンホールの影響か、パタゴニアらしいキリリとした寒さを感じられない毎日でした。でも、昨日は久しぶりの快晴。すると、放射冷却現象で気温は下がり、全てが凍り付きます。そうなると夫の冬一番の頭脳労働が待っています。
私達の家は、前住人自慢の家で、今では当たり前ですが、引っ越した11年前に、ここでは珍しかった水洗トイレが家の中にありました。流した水はコンクリートの穴に貯まり、発酵して自然に土に還る仕組みだったのですが、住み始めて2年目にはもう、コンクリートが割れて地面の水をドンドン引き寄せ、発酵せず、雨水も流れ込み、雨が続くと溢れそうになりました。ですから全てが凍り付く様な寒い日を選んで、夫はタンクを空にするのです。
なぜこれが「冬一番の頭脳労働」か、と言うと、いかに早く能率良く終わらせるか!いかに跳ねっ返りを浴びない様にするか!常に考えながら作業するからです。寒い日を選ぶのも、タンクの中の水分が凍って、すくい易くなるからなのです。柄杓も工夫を重ね、程良い長さと大きさの物を手作りしました。
果樹の根元に撒いた「物」の上を、犬猫達が平然と歩いて行くと
「うわあ〜!暫く近よらんといてよ!」
と叫んでしまいますが、私はこの作業が決して汚く嫌なものだとは思いません。(私が作業する訳では無いので、偉そうな事は言えませんが)
大地が育んだ作物を頂き、それを別の形で大地にお還しする。その全ての過程を自分達の目で確かめていける。それはとても大切な事だと思えるからです。
ドックフードを食べているお隣の犬が、我が家に来ると直ぐに分かります。不自然な色と嫌な臭いのお土産が、鳥にもつつかれず、土にも還れずいつまでも残っているからです。きっと人間だって同じでしょう。
便利な物を否定したりはしません。でも私達は、のうじょう真人の土と木で囲炉裏とかまどのある家を造り、トイレは外で、アンデスの山を望みながら、直接大地にお還し出来る方式にしたいと思っています。