時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

2005/01/22  共に生きるということ

nojomallin2005-01-22

カラカラに空気が乾き、雨の降らないこの季節は冬用の薪の準備に忙しい毎日です。
その日、私と犬の「ぱく」は、いつもの散歩コースを外れ、立ち枯れの木を探しながら林の奥へと進んで行きました。冬には葉を落とすニレも柳も、今はざっしりと葉を付け、林の中は緑の大気に満ちあふれています。以前飼っていたアヒルの為に作った小さな池を飛び越え、ふっと顔を上げた私は思わず息を飲みました。ニレの木に止まった梟と目が合ったのです。金縛り・・・私はしばらく動けませんでした。のうじょう真人で、いいえ、アルゼンチンで、いいえいいえ、生まれて初めてこの目でゥる野生の梟でした。
夫に知らせたくて、「落ち着け」と叫ぶ心とは裏腹に、がさがさドタドタと私は家に向かって駆け出しました。
「梟、ふくろう、フクロウがいる!」
私の声に、夫もカメラを持ってアヒル池に向かいました。
梟は見つけた時のままの姿で私達を迎えてくれました。野生の迫力、威厳がびんびんと伝わってきます。無遠慮な私達のカメラのフラッシュにも全く動じませんでした。
私は時々、粘土で梟を作ります。梟は家の守り神だと友達に聞いたことがあるからです。でもこうして野生の梟を目の当たりにすると、「守ってもらう」なんて間違いだと気づきました。
野生の梟と、時と場所を共有出来ること、そういう生活をしていくことが、人の将来を「守っていく」ことにつながっているのだと感じたのです。
しつこく見続ける私達に飽きたのか、やがて梟はふわりと羽を広げ、音もなく飛び去って行きました。
「ああ、ここで、私は野生の梟と共に生きていたんだ。」嬉しくて心が弾けそうでした。