時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

思いを受け取るということ

nojomallin2005-09-29

毎朝の楽しみが増えました。
「おはよう。」「大きくなってね。」
朝の散歩の時、私は76本の秋田杉の苗達に声を掛けながら、1年後、10年後、100年後の“のうじょう真人、秋田杉の森”を心に描きます。
秋田県人会さんとアルゼンチン花卉協同組合理事猪狩氏のご厚意により、ブエノス州で氏が種から育てられた秋田杉の苗がのうじょう真人にやって来ました。
成長すると50mにもなると言われる秋田杉。慎重に定植場所を決めました。
先ず、夫が穴を掘り、私が一つ一つ、1m~2mの苗を抱きかかえて(結構重いのです)運びました。夫は、なるべく芽が出た時と同じ方角を向く様、苗の枝振りを見て、植える向きを決めます。その間に私は水路からバケツで水を汲んでくるのです。そして「頑張ってね。」「来てくれてありがとう。」と声を掛けながら定植です。
そう言えば、数人の代表者だけで植えられた小学校の卒業記念樹。私は羨ましく妬ましい気持ちで、その他大勢の一番後ろから、背伸びをしてその光景を眺めていた事を思い出しました。
それが30年以上経って、ハアハアと息を切らし、汗をかきながら、充実した楽しい気持ちで記念植樹をしているのです。
3日後、全ての苗達はそれぞれの場所に落ち着きました。定植後、ぷっつりと雨が降らなくなったので、土の状態をみながらバケツで水やりをしています。一本だって枯らす訳にはいきません。数年後種がついたら、友人達に分けて播いてもらうつもりです。
色んな出会いが重なって「のうじょう真人」の住人となった秋田杉を見ながら思いが膨らみます。
この苗達の故郷秋田で、秋田杉を守る方達。アルゼンチンで種から大切に育てた猪狩氏。電話も番地も無い私達の変わりに、ブエノスからの苗の受け取り人となってくれた知人。ボルソンの街に着いた苗を、ここまで無償で運んでくれた友人。苗と共に、多くの方の愛情や優しい気持ちを受け取った気がしています。
「出会えて良かった。来てくれてありがとう。一緒に成長していこうね。」
また私は元気を分けてもらいました。