時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

自然の営みに参加するということ

nojomallin2005-03-02

のうじょう真人には1ha程のハゲ地がありました。前住人がジャム用木イチゴの栽培の為、全ての木を切りトラクターで耕し、結局果実の値が下がったので、ほったらかしにしていた土地です。木が無いので夏でも霜が降り、地表を覆う緑も無いのでカラカラに乾き「こうして砂漠は作られるんだ」と実感出来る土地でした。私達はそこを「果樹園」と名付け、手に入るあらゆる種を播きました。友人からプレゼントされたリンゴやアカシアの苗木も植えました。10年経って、やっと小さいけれどリンゴ、樫、えにしだが育ち始め、草が地表を覆い、ルピナスの花園が出来ました。
マジン村にある私達の大好きなペリートモレノ岳。年々雪が減っているので、スキーのリフトを山頂付近まで延ばす為、ニレの原生林を大伐採していました。
また少し離れた場所では、米国の億万長者が湖の周りの土地を買い占め、大豪邸を建て、マジン村に国際空港を作ろうとしています。
人間の欲には限りがありません。
木を切り、人間の都合で自然破壊をするのは簡単です。でもここパタゴニアでは、たった1haの土地でさえ、自然に還るには気の遠くなるような時間が必要です。
私には目標があります。それはのうじょう真人の「果樹園」が自然に還る営みに、種を播き続けることで参加させてもらう事です。周りの騒音、自然破壊に辛くて逃げ出したくなる時、私は果樹園に立って「逃げ出さない。諦めない。楽しもう。」と気持ちを取り直すのです。