時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

全ての答は自然にあるということ

nojomallin2005-09-15

パタゴニアで一番寒い筈の6、7月。今年は雪の降った日はあったものの、殆どが霜柱も立たない程の暖冬でした。ところが、8月に入ると、雲の低く立ちこめる、どんよりとした毎日で、真冬に逆戻りした様な寒さが続きました。9月にはいっても厳しい寒さは相変わらずですが、快晴の日が多くなり、日中は春の暖かさを感じる様になりました。
今、お隣の庭では、一列に並んだクロッカスの花が満開です。チューリップの株も、その後に整列して、開花の時を待っています。
マジン村だけでなく、ボルソンの街でも有名なお隣のご主人は、「海外からも取り寄せた珍しい植物があり、花の開花時期、配色を考え設計してあるこの庭」がご自慢で、実際、初夏〜秋には多くの見学者が訪れ感嘆して行きます。
春先、寒さが厳しくなったので、花達はたっぷりの堆肥の毛布を掛けてもらい、日光が良く当たるように、周りの木の下枝はすっかり切り取られています。
私は早春の庭を黄色に染めている、クロッカスの花の1つ1つをとても可愛く、綺麗だと思います。でも、彼の作られた庭は、少しも美しいとは思えないのです。
整然とした彼の庭から、一見雑然としたのうじょう真人に帰ってくると、いつも「ほっ」とします。
毎朝、太陽の光を浴びて霜が溶け出す時の、のうじょう真人の耕していない大地は、草の上で水滴が七色に輝き、光り、踊っています。
一番に朝日が当たる場所では、枯れ草の中で小さなスミレの株が、ひっそりと、それでも力強く紫の花を咲かせていました。
「自然はなんて綺麗なんだろう。」
そんな光景に出会う度、私は涙が零れそうな位、体中が感謝と感動で一杯になるのです。
展覧会で美しく咲き誇る花も綺麗です。でも私は、自然の中で、自然の一部として生きる全てのものが、本当の美だと思うのです。
「どうして草を刈らないの!」「どうして果樹を剪定しないの!」「どうしてもっと綺麗にしないの!」「どうしてもっと土地を有効利用しないの!」
言われ続けるこれらの言葉の答。それは、この小さなスミレの花にあると思っています。