時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

物を活かすということ

nojomallin2005-06-11

写真は冬の今、大活躍しているドラム缶薪ストーブです。このドラム缶、元々は輸出用の蜂蜜200リットルを詰める物です。アルゼンチンの最初の3ヶ月は、夫が養蜂実習したブエノスアイレス州ネコチア市に住みました。田舎暮らしと決めていた私達は、車でテント生活をしながらパタゴニアで土地探しをし、ここマジン村に5.5haの家付きの土地を見つけたのです。(この時の事は改めて書きたいと思います)
そして引っ越しの時、財産の一つとして、このドラム缶も持って来ました。ただここでは、このドラム缶に詰める程の蜜の収穫は無く、2年間は物入れとして使っていました。それがある日ふっと、夫が「これ、風呂になる」と気付いたのです。
石を運んで焚き口を作り、大きな切り株を並べ洗い場とし、露天ドラム缶風呂の完成です。星を見ながら、生まれて初めて入ったドラム缶風呂。薪で湧いたお湯の温かさ、柔らかさ。幸せで身も心もとろけそうで、言葉も出ませんでした。
それから2年、とうとう直接火のあたる底に穴が開き「お風呂」を引退、薪ストーブとして第二の人生をスタートしたのです。勿論夫の手作りです。粘土、砂、煉瓦屑で10cm積み上げた土台にドラム缶を乗せ、保温とドラム缶保護の為、内側に煉瓦を積み、扉だけは友人フェルナンドに溶接してもらい出来上がりました。
大きな薪をどかんと入れられるので、薪の消費が減った割には家中暖かく、外は雨でも洗濯物はパリッと乾くし、糀作りも夏より上手くいきます。煮物はことこと一日中煮るとビックリする程美味しくなります。ストーブの中で灰に埋めて蒸し焼く芋は天下一品。ストーブの周りで猫達もダラリと伸びて平和そのものです。またこの灰は焼き物の釉薬にも利用します。(だから絶対薪以外は燃やしません)
外見は多少不細工ですが、パタゴニアの厳しい冬を楽しく過ごせるのは、このストーブのお陰と大いに感謝しています。お金をかければ、綺麗な暖炉やロシア式ストーブは作れます。でも、自分たちの周りに有る物を工夫して活かしていく方が、暮らしの楽しみが増えていくものだと思うのです。