時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

春の町を行進する

カレンダーをめくって、「えっ」と声が出ました。

10月になって、今年も後3ヶ月なんだと気づき、時間の流れの速さに改めて驚きました。

 

天気が悪いと薪ストーブを一日中焚いていますし、快晴の早朝はマイナスにまで気温が下がりますが、春は確実にやって来ています。

梅の花は散り、水仙も花の時期を終わろうとしています。

今はボケの花が満開です。もう少ししたらタンポポとチューリプが咲き、さくらんぼの蕾が膨らむでしょう。草たちも緑濃くぐんぐん大きくなっていきます。

春特有の西風が時々大荒れします。屋根が吹っ飛ばなきゃ良いんだけど、と何時もハラハラしています。

 

 先日、生まれて初めてデモに参加しました。

アルゼンチンへ来た当初、都市では度々大きなデモがあり、道路閉鎖されていました。

給料を上げろとか、社会保障をしっかりしろとか、治安維持とか、本当に様々な理由がありました。デモでは必ずと言って良いほど略奪、暴動が起きていました。

幸いボルソンではそれは遠い世界の出来事でニュースで見るだけでしたが、私はいつも、このデモのあり方は間違っていると思っていました。

一番迷惑するのは何の罪もない市民だし、関係のない個人商店が略奪にあっていました。

要求があるのなら、直接本人に行動するべきと言ったら、いかに社会に迷惑をかけ話題になるかが重要だから、市民を巻き込むのが一番効果的だと言われました。

略奪、破壊、迷惑など必要悪を認めていました。

それは今でも納得いきませんが、デモ自体は今の世界の中では必要だと思っています。

 

さて先日参加したデモは、私の住む地区の水源地を含む広大な自然林を20年前に買い取ったイギリス人の大金持ちが、飛行場、デパート付きのカントリーと呼ばれる特別階級の高級住宅地を作ろうとしていることに関しての反対デモでした。

以前からその話はあって、その度に反対デモがあって計画は延期になっていました。

でも今回はかなり現実味を持って再浮上したのです。

救急車を寄贈したり、道路や水路、電線整備をしたり、賄賂を使ったりと様々な裏工作も進んでいました。ですから賛成住民が増えているのも事実です。

 

以前はデモがあったみたいだね、と言う感じでしたが、今回は何人もの友人、知り合いから署名やデモの案内が携帯に入ってきました。当日も「何時に街に行く?私も乗せて行って」と連絡があり、半ば流される様に参加しました。

 

ボルソンの町でこれだけ大規模のデモがあったのは初めてです。

メイン通りで大行進をし、市役所前で大騒ぎをました。でも車の迂回路を用意し、略奪も暴力もありませんでした。

面白かったのは、犬連れで参加している人が多かった事。

それぞれグループがあって、グループごとに踊ったり、歌ったりまるでカーニバルの様でした。

目立つの大好き、騒ぐの大好きの国民性がよく現れていました。

 

今回の行動でどれだけの効果があったかは分かりません。今は延期になっても、裏では確実に計画は進んでいくでしょう。

 

「正しい事」は個人で大きく異なります。それが人間社会です。これだけ人間が増えてしまって、色んな人間の価値が支配していて、地球はもうガタガタだと思います。

そして私も確実にその人間の一人です。

 

自然に学ぼう、自然に還ろうと言うのは、もう不可能な事の様に思います。

なる様になれば良いさと思う事もあります。

でもその度に、「僕は絶対諦めない。だから君も諦めないで」と叫んだ環境活動家の声が心に響きます。

 

私には進んで行動する勇気がありません。自分の主張を声に出す勇気もありません。

でも諦めず、流されず、この私のいる小さな場所で、自然や動物たちから学び続けたいと思っています。

 

 

 

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人が集まり始めています

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踊って叫んで大騒ぎ