時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「寒い冬は鍋が一番。パタゴニアで日本の味を楽しむ幸せ」

暑い夏を迎えているであろう北半球の方には、更に暑い気分にさせてしまいそうで申し訳ないのですが、今回は鍋料理のお話。
冬の代表野菜といえば、大根、白菜でしょうか?どちらも我が家の畑で時期を変え、場所を変え、何度も挑戦しましたが、土と気候が余程合わないのか 満足な収穫はありませんでした。特に白菜は結球せず、直ぐにトウ立ちしてしまいます。ここ数年は種の覚悟も難しくなって、出来ない物は仕方ないと諦めていました。
10年以上前に白菜が一度だけ、郊外の小さなスーパーで売られていた事がありました。日系人の友人にその情報をもらい、慌てて買いに行きました。 白菜は「中国キャベツ (コールチノ)」と呼ばれ売られていましたが、細長いタケノコ白菜で、しかもしっかりトウ立ちしていました。お値段も他の 野菜に比べ高かった様に記憶しています。
でも腐っても鯛ではありませんが、トウ立ちしても白菜!美味しかったです。
ただこちらの人には人気が無かったのか、それ以来売られる事はありませんでした。ブエノスアイレスコルドバなどの大都市では、白菜はもちろん、チンゲン菜、大根、バカでかくなっていない種なしキューリや茄など、日本の八百屋 さんに居る様な気持にさせてくれる野菜たちが売られています。でもここパタゴニアでそれを望むのは無理です。

ところが、時代は変わったのです。
7月の初め、やはり日系人の友人の情報で新しく出来た八百屋に白菜が売られている事を知りました。早速行ってみて、感激しました。だって、まるまると太った白菜が並んでいたのです。しかもお店の人がちゃんと「HAKUSAI」(流石にアクセントはSAIの方にあって発音は微妙に違いました が)と呼んでいるのです。お値段も安くは無かったですが、高値で手が出ないという訳ではありませんでした。

その夜は日本に帰国した知人から譲って頂いた土鍋で白菜鍋をしました。出汁は取っておきの貴重な頂き物のシイタケを奮発しました。
ああああ〜〜!!
美味しかったあああ〜〜!!

体が内側からポカポカと温まり、本当に幸せな気分になりました。
やっぱり私は日本人だなあとしみじみ感じました。
こちらでは野菜は栄養が損なわれるから絶対生で食べなさいと指導され、みんなそれを信じ、しかもサラダが一番美味しいと言います。
白菜鍋を知らないなんて、何とまあ皆さま、人生損をしているもんだと私は思います。

翌週もその八百屋へ行ってみました。そして又まるまると太った白菜たちにご対面出来ました。
白菜は癖が無く、大根の様な匂いも無く、こちらの人たちに受け入れられたのでしょう。嬉しい事です。

シイタケはあまりに貴重品なので、今はチリ産の昆布を出汁に白菜鍋を作っています。
土鍋が大活躍です。
ただ最近は春を思わせる様な温かい陽気が続いていて、鍋物の醍醐味が薄れている事が少し残念です。