時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

2020年の始まりに。

「暑い! とても外になんか居られない。」

と思った2日後の今日。肌寒さに耐えられず昼からストーブを焚きました。

気候の話題は、世界的に異常が当たり前になってしまっているので、今更パタゴニアらしい話題にはなりませんが。

 

年が明け2020年になりました。

南米の新年は、クリスマスから続くお祭りの一部にしか過ぎず、初〇〇なんて騒いだり、縁起を担いだりする事もなく、淡々と過ぎて行きます。

日本のお正月も好きですが、私はいつもと変わらず過ごすこの南米でのお正月も気に入っています。

 

少し前、日本人の方に「時子さんの趣味はなんですか?」と聞かれました。

「私の趣味?ここで生きてる事。毎日の暮らし。」

「???」

と怪訝な顔をされましたが、はぐらかした訳でもカッコつけた訳でもなく、考える前に口から出てきた言葉です。

 

日本で進学やアルバイトの面接を受ける時、履歴書を書きました。

趣味の欄が必ずあって、毎回困って、読書とか軽登山とか書いていました。

嘘ではありませんでしたが、そこから何かを学んだり自分から工夫して前に進んだりすることは無く、受け身的なものでした。

でも今は、毎日を自分が創り出している実感があります。

直ぐに解決出来ることから、途方にくれそうになる事まで、これでもか、これでもかと問題は起こってきますが、助けてくれる人たちに出会って、自分なりに解決して乗り越えて来たと思います。

 

「おおお~!私って凄いじゃない。」と外からそれを見て褒めている自分がいます。

だから今困っている事でも絶対解決できると確信しています。そしてどんな風に解決していくんだろう?と不安よりも楽しみの方が大きくなりました。

 

 

私は毎朝4時から豆腐を作ります。月に2回は麹作りから始める味噌を作ります。

私の貴重な収入源です。これが仕事と言えば仕事ですが、このどちらも楽しくて仕方ありません。「美味しい。」「他の味噌や豆腐は食べられない」

そう言ってもらえると、嬉しくてたまりません。本当はもっともっとこだわりの美味しい味噌や豆腐があるので、以前は恥ずかしい、申し訳ないと言う気持ちでしたが、今は厚かましくなったのか、嬉しい、ありがとうと素直に思います。

 

アルゼンチンでは(と言うか世界的に)ますます菜食主義が増え、野菜だけじゃなく卵も乳製品も食べないベーガンも増え、豆腐と味噌の需要が増えてきました。

正直味噌がこんなに人気になるとは思いませんでした。

それで私の味噌は物々交換でいろんな物を運んでくれます。

手作り自然肌クリーム、薪割りや畑仕事の手伝い。でも一番多いのは野菜です。

ボルソンのオーガニック農場の人たちが味噌の大ファンで、先日も1キロの味噌と旬の野菜を物々交換しました。

この農場、白菜、カブ、水菜、大根、パクチョイ、チンゲンサイ、ケール、スナックエンドウなど、八百屋では手に入りにくい野菜を栽培しています。

とうもろこし、かぼちゃ、トマト、ナス、ピーマンなど我が家で育たない野菜も育っています。

 

物々交換して土のついた野菜を洗いながら、

味噌にありがとう。

来てくれた野菜にありがとう。

味噌が好きな人たちにありがとう。

この人たちを繋いでくれた人にありがとう。

そこから膨らんで、味噌作りのきっかけをくれた人、有機大豆購入を助けてくれる人、動く体、見える目、道具たちにありがとう。

ありがとうで体が一杯になります。

 

趣味が生きることなんて、以前の私なら恥ずかしくてとても言えなかったなと思います。

今生きていること。自分の意思で動けること。居られる大好きな場所があること。それがどんなに素晴らしいことか気づきました。

 

世界は危なっかしく揺れています。ズタズタになりながら、なんとか流れを変えようと戦っている人もいます。心で応援していても、一緒に戦うことはできません。

でも私は私の出来ることを私らしくしていくと決めました。

 

2020年もよろしくお願いします。

 

 

 

 

 

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アンデスの山百合アマンカイが咲きました