時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「これこそアルゼンチンらしい豪快大雑把野菜バーベキュー」

「そのがさつさ、いい加減さ、心配り、思いやりの無さ。お前は絶対日本では暮らせない。」
時々言われます。
その度物凄く落ち込んだり、むかっときたり、そうかもなあと納得したりしています。
かと言ってアルゼンチンが好きで好きで、アルゼンチンに同化しているかというと、実はそうでもないのです。困ったばあさんです。
でもそんなはみ出し者でも、結構自分では楽しく幸せに暮らしているので有難い事です。
その私が一番アルゼンチンを気に入っている所は、多分日本人が一番嫌う、大雑把でいい加減な所です。
日本人の繊細さは凄いと思いますが、自分にそれが出来るかというと無理です。
持って生まれた、子供のころから沁みついたがさつさ、いい加減さはなかなか変えられるものではありません。
でもアルゼンチンでは日本人や日系人の方に接しない限り、私のがさつさはあまり目立ちません。
それより「丁寧な人」なんて評価を受けたりするのです。これは本当に嬉しい事です。
さて今回はそんなアルゼンチンのアルゼンチンらしい料理のお話を。
アルゼンチン代表料理と言えば、必ず「アサード」が出てきます。これは炭焼き肉です。日本の様に薄切りにして下味をつけて、ということはしませ ん。大きな塊を塩コショウだけしてバーンと焼きます。家庭でも大きなパーティをする場合、半開きにした羊をまるまる一匹炭火焼したりします。人を招待する場合、最低でも一人500gの肉の量で計算します。
若かりし頃はこの豪快焼き肉が驚きで、しかも美味しくって、他の人と同じペースで同じ量(もちろん同年代の女性の量ですが)を食べ、翌日熱を出して寝込んだ事もあります。
ここ数年は体が肉や乳製品を受け付けなくなって、食べたいとも思わなくなってきました。それでもアサードを食べる機会は時々あります。そんな 時はもっぱら野菜アサードを頂く事にしています。
最初、アサードの時の野菜焼きは、日本のバーベキューのイメージしかありませんでした。
みなさんならどんな野菜を思い浮かべますか?
私はジャガイモ、玉ねぎ、ニンジン、かぼちゃ。それらを薄切りにして網の上で焼く図しか頭に浮かびませんでした。
ところがここでは絶対忘れていけないのがピーマンだったのです。ピーマンといっても日本の物を想像してはいけません。げんこつよりも大きな物で、 こちらではモロンと呼ばれます。八百屋でこんな大きなもの一体どうやって料理するんだろうと思っていましたが、アサードをして理由が分かりました。灰の上でじくじく焼いて、焦げた皮をむいて薄切りにして食べるのです。これ、物凄く美味しいんです。そのままでも、酢醤油でも、味噌でも合います。
玉ねぎもジャガイモも全部皮つきで灰の中で焼いて、後から皮をむいて切って食べます。
さつまいもを薪ストーブの灰の中で焼いて、ほくほくと食べる事はありましたが、他の野菜でも応用できたのです。
甘味がまし、とろりとした柔らかさが堪りません。
正しく大雑把で料理べたな私向きです。焼き加減は難しいですが、日本料理の様な繊細さも熟練さもあまり必要ない、本当に有難い料理です。
モロン焼きは炭焼きでなくても、コンロの直火でも出来ます。アルゼンチン旅行中大きなピーマンを八百屋で見かけたら、是非宿の台所を借りて直火焼きを試してみて下さい。皮が焦げるまで焼くのがコツです。