時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「囲炉裏のある暮らし」

今年は暖冬でなんだか気味悪いね、なんて友人たちと話していたのが、先週から急に寒くなりました。連日マイナスなので、水道管の中で水が凍って、それが溶けずに水が出なくなりました。それで小川からバケツでの汲みが日課となっています。不便ですが、これもパタゴニアの田舎暮らしの面白さだと思って楽しむ事にしています。
さて昨年から始めた家つくり。まだまだやりたい事は一杯ありますが、なんとか住める状態になりました。でも引っ越しをしてしまうと、今住んでいる家は無人になり危ないので薪ストーブをつけません。そうすると猫たちに暖房が無くなり、寒くて可哀想なので、冬の間は引っ越さない事にしました。それに新しい家には猫扉はないし、夜、火の消えた時に囲炉裏の灰の上を絶対にトイレ代わりに使う事が分かっていますから、申し訳ないけれど猫立ち入り禁止に決めたからです。
さて今回は「パタゴニア初の囲炉裏」の自慢話。
初かどうかは正直自信がありませんが、言った者勝ちのアルゼンチン。私も「初の囲炉裏!!」と言う事にします。
本当はもっともっと大きな実用的な囲炉裏が作りたかったのですが、家の基礎や柱などもろもろの事情で、40cm×30cmの小さな囲炉裏になりました。
作っている時は「この家のシンボルだから・・・」と実際に使える囲炉裏になるとは思っていませんでした。
でも灰を入れ消し炭をのせて火をつけてみると、驚くほど「囲炉裏」なんです。
予想以上に家が温まり、自在鉤にやかんをかけると、とても早くお湯が沸きました。この勢いなら、串刺しにした魚が焼けるかもしれないと思えてきました。
最初の火入れではどぶろくをお供えして「これからよろしくお願いします」と囲炉裏の神様に下りて来て頂きました。
板の間の暮らしになりますから、書き物用の小さな移動式の座机が欲しいと思っていました。ちょうどその時、使っていない蜂箱と松の板を交換する事が出来、主人がその板の大きさや雰囲気から得た直感から机を作ってくれました。
今は時々行って囲炉裏に火をつけ、正座して机で習字の練習をしています。囲炉裏が小さく浅いので、まめに炭を足さないといけませんが、それでも囲炉裏が可愛くて嬉しくて楽しくて仕方ありません。
自在鉤に掛けられる鍋を見つけて雑炊を作って食べたいし、串刺しの魚もじわじわと焼いてみたいです。
この囲炉裏端で一緒に雑炊をすすり、どぶろくを飲みたい人は沢山います。そしてパタゴニアを旅する人の「一風変わった」旅宿にもしたいと思っています。
夢はどんどん膨らんでいます。
これからこの囲炉裏が私にどんな素敵な出会いを用意してくれるのか、本当に楽しみです。
良い事、楽しいばかりのアルゼンチンじゃありません。特に今はあらゆる面で厳しく大変です。でもこの囲炉裏端で「アルゼンチンに、パタゴニアに来て良かったな。」と一瞬でも思ってもらえたら本当に幸せです。
だって私は「パタゴニアに住んで本当に良かったな。」と思っているからです。