時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「ゆっくりゆっくり」

10月から家つくりを始めました。
見積もりから資材購入、あらゆる面で驚きの連続でした。でも家が出来上がっていくとそれ以上の驚きが待っていました。
まず煉瓦の上に塗った壁がもうひび割れてきた事。打った釘が失敗して突き出ている部分がある事。仕上げたはずなのに、壁と屋根の間に隙間がある事。窓枠やコンセント、張りなどにべたべたとセメントが付いて汚れている事。新しい床板の上に土足の足跡が付いている事。言いだせばきりがありません。
でも極めつけはドアです。ここらでは腕が良いと有名な職人さんに作ってもらいました。確かにお値段は日本の一流の職人さん並み。でもなんと・・・ドア枠の上と下では幅が1cm違うのです。当然ドアは閉まりません。夫が日本のカンナで削って苦労して直してくれましたが、今度は閉まったドアのかぎ が掛かりません。良く見てみると鍵穴が全くずれているのです。これも夫が調整して新しく鍵穴を掘りなおしてくれました。
本当に全く信じられない状況でした。そしてドアが届いた時、鍵は付いていましたが、ドアノブはついていなかったのです。間違いかと思いましたが、ドアノブは自分で買ってきて取り付けるのがここでは普通だったのです。
木も良く乾燥されていないので、暴れてゆがみ、枠と壁のコンクリートとの間に隙間が出来ました。雨が降ると膨らんで閉まらず、晴れると乾燥してすかすかになっています。
こちらでは木表も木裏も関係ありませんし、逆柱もごく普通です。(と言ってもこれは私も知りませんでしたが。)
それが良いとか悪いとか言うつもりはありませんが、これが文化の違いだろうなあと感じます。皆さんも民宿などに泊まったら、窓やドアの閉まり具合、柱などの木の使い方など建築の細部を観察してみると面白いと思います。
悪く言えばいい加減で大雑把。良く言えば自由でおおらか。家は今倉庫の様です。でもこの家をどう住みやすく快適に変えていくかという楽しみが出来ました。
木は日本のカンナで手で削ると香りとつやが見違えるように変わります。木を生かすってこういう事なんだと実感しています。
これからは自分たちで囲炉裏とかまどと土間作りです。壁塗りもあります。まだまだ時間はかかりそうです。
繊細な作業が出来ない私はこれから水パイプの穴掘りの土木作業に励みます。
アルゼンチンは夏休暇に突入しました。2月まで事務処理などは進みません。資材も届きません。年内に完成予定が大幅にずれましたが、ここはアルゼンチン。楽しんで自由に気楽にゆっくり進んでいけばいいのだと思います。
2012年、皆様はどんな年だったでしょう。私には人生観が変わる出来事があった年です。辛いことも多かったですが、それがこれからの実にな ると信じています。
新しい出会いもありました。だからやっぱり素敵な一年だったと思います。
2013年も健康で自分らしく過ごせる実り多き一年にしていきます。
皆様にも沢山の素敵な事が起こりますように。

本年もよろしくお願いします。