時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「玄関のたたき」


パタゴニアは年明けから快晴が続き、乾燥した暑い熱い毎日です。湿気が無いので早朝は寒いくらいですが、日中の直射日光の強さは頭がくらくら します。みなさん、帽子は必需品ですよ。
また空気が乾燥しています。火の後始末には細心の注意を払って下さい。お願いします。

年とともに人ごみが益々苦手になってきたので、観光シーズンの夏は、朝早く町に行き用事を済ませ、さっさと家に戻ってきています。ですから旅 行される方に必要な情報は殆どお伝えする事が出来ません。で、今生活の中心になっている家つくりについてご報告させて頂きます。

壁、屋根は地元の大工さんにお願いしたので、外観は完ぺきな「倉庫」の家が出来ました。壁塗りは内装がある程度出来てからするつもりですか ら、当分はセメント塗りの倉庫の家のままです。
さて内装ですが、届いた床板一枚一枚にカンナがけをし、木目を合わせて張り合わせました。時間と手間がかかりましたが、パタゴニアでは見ら れない奇麗な仕上がりになったと思います。これは専門技術の無い私は出来ませんから、その間水ホースの穴掘りの土木作業に従事し、次に囲炉裏 の仕上げと玄関のたたきを担当しました。囲炉裏は根太(床板の下に張る材)の関係から
40cm×30cmの小さなものになってしまいました。この囲炉裏につ いては次回ご報告させて頂くとして、今回は玄関部のたたきについて。
たたきの配合について検索で色々調べましたが手に入らない材料や資金の関係から、石灰と砂だけで、割合も試行錯誤した結果、同量でやる事にし ました。砂は石が混 ざっているので先ずそれをふるいにかける地味な作業から始めました。でも私にはこういう頭を使わない単純作業が向いています。石灰は資材屋から購入。本当は天 然ものを乾燥地に採取に行きたかったのですが、ガソリン代の高騰から諦めました。水の分量は分からなかったので、とろとろするくらいまで入れ ましたが、乾くのに時間がかかったので、もう少し固めにした方が良いと感じました。
コンクリートミキサーなどでやると一度に大量に出来るのですが、そんなものは持ち合わせていないし、ゆっくり手作りしていくことを楽しみたい と(負け惜しみ)、10リットルのバケツに石灰と砂を混ぜ水で溶き、それを玄関部に空けて伸ばし、またバケツに石灰と砂を混ぜ・・・・とい う作業を繰り返しました。一通り塗れたら木のたたき棒でたたいて固め、3重に塗り重ねました。最後は叩き跡を、模様として残してみました。
日本風にしようと石を埋め込んでみましたが、如何でしょうか?
ドアの所は敷居を踏まれないようにわざと高くしました。こちらの人は敷居をわざわざ踏んで入って来るので、高くして先をとがらせれば流石にま たいでくれるだろうという思いからです。でもこれを見た大工さん
「それじゃあ犬よけにはならないよ」
いえいえ、これは犬ではなくアルゼンチン人用なんです・・・・とは言えませんでしたが。
土間もこの配合と方法でやろうと思っています。土間は玄関の10倍以上の広さがありますから、今また砂ふるいの地 味な作業に明け暮れています。
日本では当たり前だと思っていた建築が、本当は職人さんたちの知恵と工夫と風土と自然を愛でる気持ちと、いろんな事が奇麗に溶け合って出 来ていたんだ と気付きました。
パタゴニアにはパタゴニアの良さがあり、それが日本の良さと溶け合って、のうじょう真人らしい家が出来たら良いなあと思います。