時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「チョリパン」

今回もまた食べ物のお話を。作り方を書くと「パンにソーセージを挟む」と同じ説明になるのですが、前回の「パンチョ」と今回の「チョリパン」は全く違います。

もしパンチョを食べながら「このチョリパン美味しいね。」などとポルテーニョの前で言おう物なら「NO! NO! NO!」とその間違いをきつくたしなめられ、その違いの説明をくどくどと聞かされる事になるでしょう。実は私がそうでした。まあ、私達日本人にアルゼンチン人が、おにぎりを食べながら「この寿司おいしいね」と言うような事かもしれませんが。

さて「チョリパン」ですが、私個人としては「パンチョ」より数倍アルゼンチンらしい食べ物だと思っています。

まずパンに挟むソーセージですが、これは「チョリソ」でなくてはいけません。チョリソは粗挽き牛肉(豚肉あるいは合挽きもあります)に数種の香辛料が入っています。パンチョのパンチョ用ソーセージの様に、工場で大量生産され真空パックでスーパーの冷蔵コーナーに山積みされている物ではありません。これは作っている店によって微妙に味が違います。またこのチョリソは炭火で焼くのが本当の食べ方です。

次にそれを挟むパンも違います。パンチョ用パンはやはり大量生産のふかふかパンですが、チョリパンの場合は一見フランスパンの様な皮の固い、けれども中は柔らかい「アサード用」パンです。これにはちゃんとした名前があるのですが、パンは手作りするので殆ど買うことが無く覚えていません。どんな田舎に行ってもこのパンは売っています。例えパン屋が無くても、KIOSKOや肉屋の片隅に必ずあります。

チョリパンを作る時だけではなく、アサードをする時も必ずこのパンを用意します。以前ブエノスアイレスの友人が遊びに来た時、我が家でアサードをしたのですが、私がうっかりこのパンを買い忘れ、自家製の玄麦パンとたまたま有ったクロワッサンを出したら、「アサードにこのパンはだめでしょう」と呆れられてしまいました。「パンならなんでも同じ」と軽く考えてしまったのが間違いでした。

チョリソにはかなり濃い味が付いていますし、焼くと肉汁がじゅわじゅわしみ出してくるので、マスタードなどは付けずにそのままパンに挟んでかぶりつきます。ただ野菜を挟まないのはパンチョと同じです。

チョリソはパンチョ用ソーセージに比べると数倍太くボリュームがあるので、挟むときはチョリソを縦に半分に切ることが多いです。

チョリパン屋台はチョリソを焼くので手間がかかり、煙と臭いが出る為か、パンチョ屋台に比べると都会では少ない気がします。またお値段もパンチョより高いです。

チョリパンはチョリソで決まります。美味しいチョリソを見つけたかったら、地元のでっぷり太った赤ら顔の、いかにも「肉好き」の男性に聞くとよいでしょう。最近アルゼンチンにも菜食主義の人が増えてきたのでお気を付け下さいね。