時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「パンチョ(Pancho)」

アルゼンチンを代表するマテ茶やアサード、ミラネサなどの事を以前書きましたが、今回もまた食べ物のお話を。

写真をご覧になったら「なあんだ、ホットドックじゃないの?」と思われる方も多いでしょう。実はそうなんです。でも、こちらでは「パンチョ」と呼ばれる人気の食べ物です。十代から20年近く「完全菜食主義」だった私は、実はハンバーガーもホットドックも食べたことがありませんでした。ですからこのパンチョがホットドックとは少しも気付きませんでした。大きな町のバスターミナルや大通りには必ず屋台が出ていて、安い、早い、美味しい???と、結構人気があります。

と言っても、私は一度も食べたことが有りませんでした。それがアルゼンチン移住15年目にして、なんと我が家でこの「パンチョ」を食べる機会に恵まれたのです。

生粋のブエノスアイレス人(こちらではポルテーニョと呼ばれ、良くも悪くも特別扱いされています)の友人夫婦がパタゴニア旅行中に、我が家にも数日滞在していきました。日本食が苦手の彼らですから「アルゼンチン料理」を教えて貰うという口実で、彼らに食事を作ってもらうことにしました。

イタリア系の彼らはピザやパスタが中心でしたが、アルゼンチン風イタリア家庭料理をいろいろ教わり、とてもよい勉強になりました。(同時にどうしてあれだけ太れるのか、高血圧で苦労するのかも実感しましたが)

そして最終日、「早くて簡単で美味しくて栄養もある」と彼らが用意してくれたのが「パンチョ」だったのです。

スーパーで「パンチョ用ソーセージ」を買ってきて、それを沸騰したお湯に入れ温めるのです。これは生でも食べられるそうです。

そして「パンチョ用パン」の真ん中を切って開き、そこにソーセージをのせ、パンチョ用マスタードを付けるだけ。最近は「パンチョ用ポテトチップ」をパラパラとその上にかけるのが通な食べ方なんだとか。

考えてみたら、これが生まれて初めて食べるホットドック、パンチョなのです。なんだか感動しちゃいました。あまりにも簡単過ぎて、これが美味しい人気料理なのかと不思議な気もしましたが。

聞くところによると、日本のホットドッグは炒めたキャベツを入れたりするそうですが、こちらでパンチョと言えば、茹でたソーセージ(炒めたり焼いてはいけません)にマスタードと決まっているそうです。

私個人としてはもう一度食べたいとは思えませんでしたが、有る意味非常にアルゼンチンらしい食べ物だと思いました。

バスターミナルや大通りで「パンチョ」屋台を見つけたら、ポルテーニョ気分になって一度は食べてみるのも楽しいかもしれません。

でも、大きな御世話かもしれませんが、広いアルゼンチンでの旅行は健康第一、体力勝負。安くて早くて美味しいからとパンチョばかりは食べる事はお止めになった方が良いと思います。