時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

のうじょう真人の“きのこ達”

「Hongo de ciprés」(シプレスのきのこ)
日本でいうアミガサタケです。10月のこの時期、朝夕の散歩兼見回りは、普段は入らないシプレス林で、きのこ目になってアミガサタケを探すのが日課となりました。
10年前には1日に何十個も、歩けばアミガサタケという位目に付いたのに、ここ5年で“ぞっ”とする程出なくなりました。今では一シーズン(10月中〜11月中)に10年前の1日分位の収穫しかありません。だから本当は、この林には入らず自然のままにしておきたいのですが、私達がきのこを採らないと分かると、近所の一部の人が「これ幸い」とばかりに、邪魔な枝をぶった切り、そこら中踏み荒らし、きのこの略奪をしてしまうのは経験済みです。なぜならこのきのこ、ヨーロッパにとても高値で売れるからです。
朝、エルボルソンの町へ行く時、荷台に老若男女をぎっしり乗せたトラックとすれ違うことがあります。マジン村の私有地に無断できのこ採りに行く人達です。
地元のラジオ局から「自然を大切に。他人の土地に入ってきのこは採らないように」と放送されます。けれども「シプレスきのこ、高値で買います」という広告の方が頻繁に流されるのです。
自然は正直です。
村の人口が急増加し、木が切られ、人口音が増え始めた時、きのこもガクンと減りました。松露もカラカサタケも、その他、名前も知らない小さなきのこ達も、ほとんど見られなくなりました。
今、私達は見つけたアミガサタケの半分は踏みつぶす様にしています。
「ごめんね」「ありがとう」
シプレス林の中で、私は木や草やきのこ達に、どんな言葉をかけたらいいのでしょうか・・・
注;シプレスはここの自生の常緑針葉樹で、日本の檜葉に似ています。