時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「山を歩こう」

観光客で賑わっていた町も、夏の終わりと共に少しずつ落ち着きを取り戻しています。

人と車の多さ、暑さと乾燥で、クリスマスから3月いっぱいは何処にいても息が詰まりそうでしたが、4月に入りやっと心にゆとりが生まれてきました。

薪の準備も一段落して十分暖かい冬が過ごせそうですし、林檎の収穫までは少し先ですし、私達には暑くも寒くもないこの時期は山歩きにはもってこいです。3月いっぱいで山小屋やキャンプ場は閉鎖してしまう所が多いですが、日帰り専門の私達には影響はありません。

4月の初めではまだ山の紅葉には早いですが、それでも自生種のレンガやニレなどの南極ブナが秋を感じて赤や黄色に葉を変えようとしている息づかいは伝わってきます。

高山植物も春とは違う花が咲き、その姿を見つけるのも楽しいものです。

観光客が多く、がちゃがちゃと騒がしいのがラテン国らしくて好き!と思われる方にはこの季節の山歩きはむかないかも知れませんが、パタゴニアの自然を感じるには4月の山は最高です。

国立自然公園内では一切の植物採取は禁止されていますが、そうでなければ紫に熟した甘い野生の木イチゴの実を歩きながら食べる楽しみや、きのこを探す楽しみもあります。虻も蚊もいません。またどの登山道にも道しるべがあり、迷うことはありません。

ただ山の中に売店はありませんし、山小屋で売っている水やビスケットは目が飛び出るほど「高価」ですから、必ず町で買って行って下さい。

交通が不便で行きにくい場所が多いのが難点ですが、その分人も少なくのんびり出来ると言うものです。


パタゴニア、特にエルボルソン周辺のアンデス山脈は増え続ける観光客の為に、自然林が消え観光設備が整い始めています。あと数年で山の環境は激変してしまうでしょう。便利で安全になって嬉しいと思う人には良いことでしょうが、私には残念でなりません。ですから開発と追いかけっこするように、私達は山の自然を感じに行きます。

ただし4月の登山は雨になると山頂付近は雪になります。ですから決して無理はせず、のんびりと山の秋を楽しんで下さい。