時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「きのこにありがとう」

例年の2月は乾燥して暑く埃っぽく、残暑厳しい月ですが、今年は雨、曇りの日が多く、薪ストーブを焚いた日もありました。旱魃が進んでいるので、雨が降ると私個人はほっとしますが、観光客は何処へも行けずうんざりしていたことでしょう。
ただ薪の準備が出来ず、収穫の遅れたにんにくが長雨の所為で畑の中で腐ってしまいました。プラムもなかなか熟しません。
真夏の12月末に強烈な霜が降り、果樹の花や作物が焼け、我が家だけでなくエルボルソン全体で収穫は悪いです。今年はジャム も果実ジュースもあまり作れそうもありません。
でも嬉しい事もあります。それはヌメリイグチきのこが出始めたことです。旱魃で出なくなったきのこが多い中で、この子は毎年にょきにょき出てくれる有難いきのこです。しかもかなり大きく、かたまって出るので、目の悪い私でも簡単に見つけられます。
網焼きして酢醤油で頂いたり、てんぷらにしたり、野菜炒めにしたり食べ方はいろいろありますが、大きいのもなら一個で十分ですから、残りは消化に悪いスポンジ部分を取り除き、薄切り にして天日干しにして保存食とします。
今年は雨が多く天日干ししてカラッと乾かすことが出来ないので、家の中に棚を作って乾かしています。
日本では原発事故以来、多くの地区で自然のきのこが食べられなくなったと聞きます。
目に見えない恐怖。
自然の恵みに感謝できない暮らしの寂しさ。
のうじょう真人に出てくれた元気なきのこを乾燥保存して、一人でも多くの人に食べてもらいたい。自然の恵みに感謝できる幸せを感じてもらいたい。人間も、きのこも、微生物も、菌も、自然の全てが関わりあって支えあって生きているんだと言う事を実感してもらいたい。
私に出来ることは誰かの為にきのこをせっせと保存するだけです。
自然のきのこが食べられない暮らしなんて絶対におかしいと思っています。