時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

いってらっしゃい。焼き物達。

時間が驚く速さで流れています

時間の流れと自分の思いとがかみ合わず、気持ちと現実とがどんどん離れている感じがします。

ボランティアの人が送ってくれた私の写真を見てものすごく驚きました。そこに写っていたのは知らないおばあちゃんでした。

意識していない自分の横顔はこんなに年取って厳しい顔をしていたんだと。でもそれが現実。

それなら、いつどんな時に見られていても、温かいばあちゃんだと感じてもらえる顔になりたいと思いました。

 

夏シーズンも終わりに近づいています。3月になったらストーブを一日中焚く日も出てきます。畑の野菜や果実の収穫保存に忙しく過ごす内、あっという間に冬になってしまいそうです。

ボランティアも3月いっぱいで受け入れを終わります。

今年もボランティア達とは楽しい時間を過ごせました。「えっ」と驚くような事もありましたが、全てが良い経験でした。農場にいる事が幸せで、どこへも行きたいと思いません。隣町に行くのも億劫で、用事の無い気ままな旅行なんて考えられません。

でも海外からやって来るボランティア達が、私の知らない世界を見せてくれます。世代も文化習慣も価値観も違う若者達。私が勝手に頭の中で作り上げていた「今時の若者」ではなく、彼らがいるからこの先の世界も続いていける、彼らが経験を積んでいけば、生きているのが楽しいと思える世界に変わっていくと希望が持てました。

 

そしてとても嬉しい事がありました。

ブエノスで1ヶ月ほど過ごした後にやって来たドイツ人男性のボランティア。

我が家で過ごした後は2週間ほど国際観光地、南米のスイスと自称している町へ行き、そこでアルゼンチンでの最後のバケーションを楽しみドイツへ戻る予定でした。

ところがボランティア最終日に

ここでの生活がとても心に残る楽しいものだったから、この思いを抱いてそのままどこへも寄らずドイツに帰ると言いました。

その言葉だけでも嬉しかったけれど、農場プロジェクトでかまどを作った時、昔,地盤を固めるつもりで埋めた失敗作の焼き物がザクザク出てきました。

それを彼らは(ボランティアが他にも2人いました)考古学者の様に掘り出し、洗い、欲しいと言ってくれたのです。

女の子達は犬の置物とか、マテ用の器とか小さい物を2、3個選びましたが、彼は小さな箱に一杯の焼き物を選びました。

飛行機で荷物は預けず機内持ち込みだけのリュックで身軽に帰りたいからと、服や靴だけではなくコンピュータまで入ったトランクをここで仲良くなったアルゼンチン人の友人に置いていきました。

そして殆ど空になったリュックに、選んだ私の焼き物を全て詰め込んだのです。

何年も土の中に埋まっていた焼き物達が、綺麗になって、飛行機に乗ってドイツまで行きました。

嬉しい

嬉しい

嬉しい

失敗作だなんて思ってごめんなさい。失敗作なんて存在しないんだ。時間がどんなにかかっても、自分が一番輝ける場所と時に巡り会うんだ。そう焼き物達とボランティアが教えてくれました。

自分の価値観や基準で決めるのではなく、全ての物たちを愛して感謝して大切にしていこうと思いました。

ありがとう農場での発掘作業

かまど作り開始