時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「大好き。だから綺麗に付き合わなきゃあ。」

何かと言うと「いくらだった?」「いくら貰える?」「それじゃ損だ。」とお金に換算する人がいます。私はいじましい性格で、お金持ちを羨んだり、妬んだり、目先の利益のみに囚われてしまうので、なるべくお金から遠ざかるようにしてきました。
お金の事を気にして口にするのは心が卑しくなるだけと思ってきました。
でもそれって無理があります。本当にそう思うなら、そんな事考えない、思いもしない筈です。
私は犬の姫や新しい家族のフィナとテリーが大好きです。猫の福も大好きです。
同じ時間を過ごしてきた此処の木や果樹や花が大好きです。日本語教室に来る生徒さんが大好きです。農場の土で作り薪で焼いた焼き物が大好きです。気の合う友人が大好きです。積んだ薪の間を走るトカゲも、農場に住んでいる山鳩も野鳥もキツツキも蜘蛛だって大好きです。アンデスから吹く風も、朝日に輝く露も、天の川にかかる南十字星も、夜道を照らす満月も大好きです。
私の大好きなものたちは、私を明るく元気にしてくれます。いつでも私を支えてくれます。力をくれます。だからいつも大切に思い感謝しています。
それならお金だって同じです。いつも私を助けてくれるし、作った味噌や豆腐を美味しい、焼き物を綺麗だと褒めてくれ、その上わざわざお金を出して買ってもらえると凄く嬉しいです。
だったら素直にお金大好き、ありがとうと思えば良いんだと気付きました。私は姫に絶対「お前といると心が卑しくなる」なんて言いませんし、思いもしません。もし冗談でも言葉にしたら、姫はとても悲しむし、私から離れて行ってしまうでしょう。それなのに今まで私はお金に対してそんな酷い事を思ってきたのです。
大好きだから、他の大好きたちと同じ様に、大切に綺麗に素直に付き合っていくべきだったんです。損得の対象にしてはいけなかったんです。
アルゼンチンは相変わらずのインフレ、物価高です。今までは100ペソが最高札でしたが、ついに200ペソ、500ペソが作られました。日本語の生徒さんが珍しいからと200ペソを見せてくれたのは昨年末。ところが今ではごく普通に出回っていて、500ペソも時々スーパーで払っている人を見かけます。反対に2ペソ札はボロボロヨレヨレになっています。近いうちに1000ペソ札も作られる予定です。新札が作られるのはどういう事か、緩い頭の私でもなんと無く分かります。でも心配ばかり不安ばかりでも仕方ないので、「新札のデザイン、人物じゃないのが良いね。クジラの尻尾やジャガレの足跡が可愛いじゃん。」と楽しんで、私もみんなも幸せになる様な価値ある事に使う為に「大好き。だからどんどん私の所に来てね〜!」と思い続けていきます。