時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

エディちゃんからの忠告

毎日雨が続いています。どこもかしこもびしゃびしゃです。山には1メートル以上の雪が積もっていると、山から降りて来た人が言っていました。

夏の干ばつは山に雪があるかどうかで違って来ますから、私は雨の多い冬を大歓迎しています。

パタゴニアと言っても、ここは雪国ではありません。雪が降って積もっても、数日すると雨に変わり溶けてしまいます。

ですからみんな雪には慣れていません。多少の雪ならチェーン無しのツルツルタイヤで強引に車を走らせます。当然接触事故も林に突っ込んで立ち往生している車も多いです。

ですから怖がりの私は雪が降ったら車に乗りませんでした。

 

先週の木曜日、10kgの豆腐の注文があり、前日から用意していました。

当日の朝は曇りでしたが、8:00から雪が降り始めました。

でも降り始めだから急いで街へ行って帰ってくれば良いと出発の準備をしました。ですがものすごい勢いで雪が降り積もり始めました。雪もいつもの水分を含んだ重い雪ではなく、サラサラの雪。スキーには最適ですが、これから山道を下りて街に行こうとしている私には最悪でした。

でも今日行かなければ10kgの豆腐はキャンセルになってしまいます。初めての雪道ではないし、行こう!と決めました。

チェーンはありませんが、エディちゃん(私の車)は四輪駆動で、タイヤも結構良いものを履いています。ゆっくり落ち着いて行けば大丈夫。唯一怖いのは対向車だけど、この時間ならまだマジン村に登ってくる車はいないでしょうと考えました。

 

そして深呼吸をして出発しました。

ところが何時ものベタ雪とは違い滑るのです。

 

「怖い」

「いや大丈夫!」

 

10kgの余った豆腐と金銭的損失を考えると引き返す決断もできないまま急な下りに差し掛かりました。

すると途端に加速し、滑り始めたのです。

一番低いギアで走っていましたし、ブレーキを踏む事も出来ません。ハンドルをどう回せば良いのかも分からず、下手な事をして大事になったらと怖くて、ただひたすら流れに任せていました。

エディちゃんは滑りながら、対向車線に行き、ゆっくりと180度回転して止まりました。

一気に力が抜けました。

当然そのまま坂を登って引き返しました。

 

家に着いてからしばらくエディちゃんから下りられませんでした。

ありがとう。よく頑張ってくれたね。無理させてごめんなさい。

ハンドルを撫でながら、何度も繰り返しました。

 

10kgの豆腐は水を切り、味噌漬けにして保存しました。

久しぶりに燻豆腐を作ろうと思います。

この燻豆腐、ものすごく人気があり、いつもお世話になっている人たちへの最高のお礼となります。

 

豆腐を売りたいというせこい気持ちで冷静な判断が出来ませんでした。

もし対向車がいたら、もし崖側に滑っていたらと思うと、自分の幸運を心から感謝しました。

 

「雪道は自分がちゃんと走っていても、他の車が滑ってくるから怖いのよね。」

などといつも言っていたので、その当事者がお前だろ!と恥ずかしくなり、大いに反省しました。

 

まだ冬は続きます。9月でも雪が降ることもあります。

臆病者の鈍臭い自分をしっかりと認識し、事故のないようにしたいと思います。

雪はこうして楽しむのが一番!