時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

毎日が奇跡

パタゴニアは秋です。

南極ブナが紅葉してアンデスの山が紅く染まっています。

5月4日には一瞬、雨が雪に変わり、山が白い衣をまといました。5月初旬の降雪はとても早いです。

もう4日間土砂降りです。20年前は秋から冬は、これでもかこれでもかと雨が降り、どこもかしこもぬかるんでいました。でも毎年降水量が減り続け、近年は以前の半分になっていましたので、こんなどんより雨ばかりの秋は本当に久しぶりです。

ロックダウンや行動制限の影響で、大気が綺麗になったとか、オゾン層が塞がったとか言われていますが、ここパタゴニアでもそれが影響しているのかな?と考えています。

昔に戻れとか、昔は良かったと言う気は全くありませんが、この機会に人は進む道をもっと自然に寄り添う方へ軌道修正するべきだと思います。

豊かに生きる事に、物やお金の占める割合は本当はとても少ない気がします。無いと駄目、困ると思い込んで来ただけの気がします。手放すのが怖くて握り締めているもの、変化が怖くてしがみついているものを解き放った時、「あれ?私は何に迷っていたんだろう。私の前にはこんなにたくさんの道が開けていたのに」と、心が軽くなって、自信が湧いてきます。

どうしようと途方にくれそうになる時もありますが、直ぐに、「さて私はこれをどう解決するだろう。」と自分を楽しむ事ができます。

これはこの一年で特に実感した事です。

 

アルゼンチンは外出規制とマスク着用義務が続いていますが、私の住むボルソンに関しては人の流れは少しづつ活発になっています。

私も週一回は街に行くようになりました。日本語教室はまだまだ再開できそうもありませんが、豆腐と味噌の卸や、個人的な配達をまだ少量ですが復活しました。

 

豆腐を作る量が圧倒的に減ったので、その時間を味噌仕込みや燻豆腐作りに充てています。

燻豆腐は、固めに作った豆腐を3日以上味噌に漬け1日かけて燻ます。手間暇かかりますし、味噌も燻用の薪も結構使いますからなかなか作れずにいましたが、この機会にお世話になっている人や豆腐や味噌のお得意さんにお裾分けしています。

豆腐が苦手、日本食に興味ないという人でも、この燻豆腐だけは大人気です。

「かつて経験がないほどの美味しさだ!」なんて絶賛してくれる人も少なくありません。

それともう一つ、菊芋の味噌付けも人気が出始めています。

これは味噌を仕込む時に、少し干した菊芋を丸のまま漬け込むのです。1年か2年後味噌を使う時取り出します。べっ甲色になった菊芋はほんのり甘みがあり、シャキシャキとした歯ざわりがあって、とても美味しいです。味噌に漬けない菊芋は、焼いても煮ても生でもお腹にガスが溜まり、あまり食べやすい野菜ではありませんが、味噌に漬けたものはガスが溜まらないのも魅力です。晴れ間を見て畑の菊芋を収穫しようと思います。

焼き物も今冬は何回も窯焚きしようと思っていたのですが、このコロナ騒動、終息するのに時間がかかりそうな気がします。次夏もボランティアを受け入れ薪準備などの野良仕事の予定をしていましたが、あまり期待できません。ですから今ある薪を家庭用に大切に使っていかなければならず、窯焚きは後継者が見つかるか、全てが落ち着いてボランティアを安心して受け入れられるまで待とうと思います。

 

ところでチャミーの残っていた2匹の男の子。2人の里親さんが見つかりました。ただその内の一人は、猪の狩猟犬にするという事で、そんな危険な環境に送り出したくないと友人が断りました。

そして今、その子は私の家にいます。新しい家族です。ひとりぼっちになってしまったし、お姉ちゃんたちは無視しているし、寒くなってきたので家の中で育てています。

この子が寿命を全うするまで私は元気でいられる自信がなかったのですが、引き取った今は、絶対大丈夫。同じ方向を見て進み、後を任せられる仲間が居て、私もバリバリ元気に生きていると確信しています。

名前は私の大好きな漢字から「心」にしました。でも発音は最初の「こ」を強くKOkoro (小コロ)

にしています。

 

今、ここにいる事。

今、この世界で生きている事。

今、命に囲まれている事。

今、自分の意思で動ける事。

奇跡の様な今を大切に過ごしたいです。

 

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寒い朝