時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

命に思う事

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野生ミントの花が咲いています


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9匹の仔犬が生まれました。

でも2匹は生まれて直ぐにまた天に戻って行きました。

残った7匹の子。お母さんそっくりの黒白が5匹。多分お父さん似のグレーが2匹。

まだ目も開きませんが、キュウキュウ鳴いて、日に日に大きくなっています。

 

経緯はこうです。

夏の間山小屋で働いている友人カップルが、犬を保護しました。

と言うか、山で痩せて衰弱した犬を登山客が保護し、山小屋へ連れてきました。介護の甲斐あって元気になり、すっかり懐いて愛着も湧いたので彼らが飼うことに決めました。でも山小屋で世話する訳にもいかないので、彼らの仕事が終わる4月まで、私が預かることになったのです。

痩せてガリガリの割に、おっぱいが大きく、きっと出産して直ぐに置いてきぼりにされてしまったのだとみんな思っていました。

預かって一週間した頃から、なんか変だな。お腹ばかりが目立ってきたな。と思い始めました。

1週間ごとの休みに山から下りて来て、友人はドックフードを持って「チャミーガ」に会いにきましたが、栄養不良で回復していないからだろう。獣医に連絡取ってみるよ。と至って呑気に構えていました。

でも1ヶ月を過ぎた頃には、誰の目から見ても出産間近だと分かるようになりました。

お乳が張って、お腹がパンパンに膨らんで、色からしてまるでホルスタインのようでした。

そうなると、一時的であっても彼女の親である私は緊張してきました。

犬の出産は軽いって聞くけど、もし万一難産だったらどうしよう。

若い頃、乳牛出産には何度も立ち会ったし、牛だけじゃなく、羊もヤギもウサギも馬も、一応哺乳経験はあるんだから、いざとなったらあの時の経験と感を思い出すだろう。と自分を落ち着かせました。

その甲斐あって、またチャミーの私を信頼してくれる気持ちもあって、出産時期を見逃すこともなく、産室に誘導できました。

流石に出産直後は唸って人を寄せ付けませんでしたが、翌日には元の人懐こいチャミーに戻っていました。

これから友人と共に、子供達の新しい家族探しをしなければなりません。それは決して簡単なことではありません。でも絶対に困ったなとかどうしようとか考えない事にします。

 

ここで、生まれてくれてありがとう。

今私とここで生きていてくれてありがとう。

新しい家族の元へ行くまで、一緒にいようね。

みんな幸せになるからね。

 

毎日子供達に声をかけます。

楽しいね。嬉しいね。幸せだね。そんな気持ちだけを届けます。

 

縁あって私の農場で生まれた子。最初に吸った息も、聞いた音も、嗅いだ香りも、感じたぬくもりも、みんな私と共有できる命達。

ここは優しい命に囲まれている場所だから、私を支え生かしてくれる自然達が、お前達も優しく包んでくれているよ。

 

そしてよく頑張ったね。よくまた人間を信じてくれたね。チャミーに何度もありがとうを言います。

生きるって本当に素晴らしいことだと感じます。