「無い…。なんで無いの!」
朝、豆腐作りを終え、ワン達のご飯のため裏口から出ると、外にボランティアの靴が出ていました。結構良さげな(私靴の良し悪しが分からない人間なんです)登山シューズで、大きさからフランス人の女性のだと分かりました。
彼女、ちょっと動作が乱暴で、有る物なんでも平気でズカズカ使ったり、食べたりして厚かましいところもあるけど、力仕事でも嫌がらずにやってくれるし、悪気が全然ないし、お箸を使って食べるし、露天風呂も大好きだし、可愛いところのある人です。
その彼女の靴の片方が無いのです。
なんで~!
いつもは外になんか出して寝ないのに。
私はワンコを疑いました。野良出身の彼女達、穴を掘ったり走り回ったりはするけれど、物で遊ぶ事には全然興味が無く、今まで靴を持って行ったことなんてなかったのですが。
1時間必死に探しました。
探している間いろんな事を考えました。
もし見つからなかったらなんて言おう。見つかってもボロボロだったらどうしよう。
私の持ってる靴であげられるのなんて無いし、弁償するお金も無いし。
でもやっぱり責任はとらなきゃあいけないよね。
でも待てよ。犬が居るのに外に出しておいた不注意は彼女の方だし。
私の犬達が持って行くことなんてあり得ないって言い張ろうか。
それとも全く知らんぷりで通そうか。
どうしよう。どうしよう。
外から彼女が朝ごはんを食べているのが見えました。
彼女が騒ぐまで知らん顔しておこうかと思いましたが、彼女の顔を見たら
「靴が外に出てるけど…。片方しかないんだけど…。」
と「おはよう」よりも先に口から出ていました。
「うん。左だけ外に出しておいた。」
へえ? 片方だけ?
一体なんなのよ!なんで片方だけ外に出しておくのよ。
ほっとしてがっくり気が抜けました。
そして直ぐに、疑ったワンコ達に申し訳ないとt思いました。
言い訳ばかり考えた自分にがっかりしました。
ボランティア達との暮らしは、思いもかけない事が多くあります。
ドイツ人の20歳の女の子は、「シャワー浴びる」と言って朝いきなり下着で部屋から出てきて度肝を抜かれたし、新品のふかふかタオル(もちろん我が家の)がテーブルに置いてあるので不思議に思っていたら、「テリーちゃんが(我が家の犬で、外で自由に過ごしています)夜、雨で濡れてたから可哀想で拭いてあげたの。」「昨日はテリーちゃんと一緒にベットで寝た」と言われたり、私は早く寝るので夜はボランティアの自由に任せているのですが、冷蔵庫の野菜を夜食でほとんど食べられたり、張り替えたばかりの障子に早速穴が開いていたり。
でもムカッと思う事があっても、後から必ず笑いがこみ上げてきます。また一ついい経験ができたなと思う事ができます。
私は今まで多くに人に迷惑をかけて、助けてもらってきました。ほとんどの人に恩返しができないままです。もう恩返しできない人も居ます。
だから今私に出来る事は、今できる事を誠実にすることだけかもしれません。多くの人の支えがあって、今の私が居るのだから、私も誰かの支えの一部に参加させてもらい、私の中の一杯の恩を少しづつこの世界に置いていこうと思います。
姫リンゴの実が熟してきました。今年はリンゴが不作ですから、この実でジャムを作ってみようと思います。梅が実らないので、プラムで梅干しを作ります。
風の強い毎日です。