時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

恩返しを教わった夏

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「無い…。なんで無いの!」

 

朝、豆腐作りを終え、ワン達のご飯のため裏口から出ると、外にボランティアの靴が出ていました。結構良さげな(私靴の良し悪しが分からない人間なんです)登山シューズで、大きさからフランス人の女性のだと分かりました。

彼女、ちょっと動作が乱暴で、有る物なんでも平気でズカズカ使ったり、食べたりして厚かましいところもあるけど、力仕事でも嫌がらずにやってくれるし、悪気が全然ないし、お箸を使って食べるし、露天風呂も大好きだし、可愛いところのある人です。

その彼女の靴の片方が無いのです。

なんで~!

いつもは外になんか出して寝ないのに。

 

私はワンコを疑いました。野良出身の彼女達、穴を掘ったり走り回ったりはするけれど、物で遊ぶ事には全然興味が無く、今まで靴を持って行ったことなんてなかったのですが。

 

1時間必死に探しました。

探している間いろんな事を考えました。

もし見つからなかったらなんて言おう。見つかってもボロボロだったらどうしよう。

私の持ってる靴であげられるのなんて無いし、弁償するお金も無いし。

でもやっぱり責任はとらなきゃあいけないよね。

でも待てよ。犬が居るのに外に出しておいた不注意は彼女の方だし。

私の犬達が持って行くことなんてあり得ないって言い張ろうか。

それとも全く知らんぷりで通そうか。

 

どうしよう。どうしよう。

 

外から彼女が朝ごはんを食べているのが見えました。

 

彼女が騒ぐまで知らん顔しておこうかと思いましたが、彼女の顔を見たら

「靴が外に出てるけど…。片方しかないんだけど…。」

と「おはよう」よりも先に口から出ていました。

 

「うん。左だけ外に出しておいた。」

 

へえ? 片方だけ?

一体なんなのよ!なんで片方だけ外に出しておくのよ。

ほっとしてがっくり気が抜けました。

 

そして直ぐに、疑ったワンコ達に申し訳ないとt思いました。

言い訳ばかり考えた自分にがっかりしました。

 

ボランティア達との暮らしは、思いもかけない事が多くあります。

 

ドイツ人の20歳の女の子は、「シャワー浴びる」と言って朝いきなり下着で部屋から出てきて度肝を抜かれたし、新品のふかふかタオル(もちろん我が家の)がテーブルに置いてあるので不思議に思っていたら、「テリーちゃんが(我が家の犬で、外で自由に過ごしています)夜、雨で濡れてたから可哀想で拭いてあげたの。」「昨日はテリーちゃんと一緒にベットで寝た」と言われたり、私は早く寝るので夜はボランティアの自由に任せているのですが、冷蔵庫の野菜を夜食でほとんど食べられたり、張り替えたばかりの障子に早速穴が開いていたり。

でもムカッと思う事があっても、後から必ず笑いがこみ上げてきます。また一ついい経験ができたなと思う事ができます。

 

私は今まで多くに人に迷惑をかけて、助けてもらってきました。ほとんどの人に恩返しができないままです。もう恩返しできない人も居ます。

だから今私に出来る事は、今できる事を誠実にすることだけかもしれません。多くの人の支えがあって、今の私が居るのだから、私も誰かの支えの一部に参加させてもらい、私の中の一杯の恩を少しづつこの世界に置いていこうと思います。

 

姫リンゴの実が熟してきました。今年はリンゴが不作ですから、この実でジャムを作ってみようと思います。梅が実らないので、プラムで梅干しを作ります。

風の強い毎日です。

 

 

 

 

 

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