時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「右と左」

我が家には現在7匹の猫がいます。黒猫「ニャグ」以外はみんな「福」母ちゃんから生まれた兄弟です。子供の頃から一緒だったのはいつも「犬」でした。ですからこんなに多くの猫達との暮らしは初めてです。当たり前の事ですが、それぞれ個性があり付き合い方も違います。えこ贔屓はいけないと分かっていても、私に甘えてまとわり付く子はついつい猫かわいがりしてしまいます。
そんな一匹に「しらっこ」がいます。彼女は「福」母ちゃん最後の娘です。
実は母ちゃんがあまりにハイペースで子供を産むので、2回目の子が離乳した時に避妊手術に連れていきました。ところが開腹してみると既に妊娠中だったのです。そうして生まれたのが「しらっこ」を含む5匹の姉妹でした。
獣医さんのアドバイスに従って、授乳中の45日目に「福」に手術を受けてもらいました。ですからこの子達はお腹にいる時と授乳中2回にわたって痲酔の洗礼を受けてしまったことになります。
今までの育児で「福」は男の子贔屓だと分かっていましたが、最後の子は何故か全て女の子。その所為かどうか、あからさまな手抜き育児で、まだ娘達の目も開かない内から毎日朝帰り。大きくなった兄の「福時」に一緒におっぱいを与え舐め回していました。
それでも子猫達はスクスクと育ってくれました。ただ、15匹もの猫達との同居には限界があり泣く泣く子猫の里親を捜しました。なんとか3匹の行き先が見つかりましたが、2匹にはどうしても見つからず生後2ヶ月目にして残った娘達に「しらっこ」「たみっこ」という名前がつけられたのです。
ところで、何故私が「しらっこ」を贔屓してしまうかと言うと、先ず2回の痲酔洗礼を受けさせてしまったことと、生まれた瞬間に思わず「わあ、“また”白だ。」と酷い言葉を聞かせてしまった負い目があるからです。
他には猫のくせに受け口で顔に愛嬌があること。2度の家出で4ヶ月家を空けても帰って来てくれたこと。体が小さく子猫の雰囲気をいつも持っていること。兄からいじめられていること。
そして最大の理由は、この子の左側には見事な末広がりの幸運の「八」模様があることなのです。
ところが3才になった今年、私はもっと凄い発見をしたのです。彼女の右側には、左側の「八」模様に負けず劣らず美しい「ハート」模様があったのです。
人間とは不思議なもの。3年もの間「八」模様にばかり目がいって、この美しい「ハート」模様に気が付かなかったのです。
これは私の勝手な想像ですが、家出した時に御世話になっていた家族に「ハートちゃん」などと呼ばれかわいがられていたのでは無いかと思うのです。
この「しらっこ」。お客様には恥ずかしがってか姿をなかなか見せません。それでも食事をしたり雑談をしていると突然お客様の膝に乗ってきたりもします。日本向けの「八」模様とアルゼンチン向け「ハート」模様。あなたはどちらの模様がお気に入りでしょうか?