時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

大好きだった。私と全て。

以前に書きましたが、3年ほど前、動物愛護協会から女の子の犬を引き取り「お嬢」と名付けました。けれども一年ほどして、お嬢は自分で新しい里親を見つけ、ふらりと出て行ってしまいました。

お嬢が行ったのは、我が家から歩いて20分ほどのアメリカ合衆国から移住してきた友人の家でした。それを知ったのは本当に偶然でした。そしてとても安心しました。

時々彼らを訪問して、お嬢にも会いました。

 

先日お昼の招待を受け、久し振りに彼らを訪問しました。

行くと、ディアナさんがミルクを温めているところでした。料理上手の彼女。何を作っているのかな?と見ていたら、温度を確かめて、そのミルクを哺乳瓶に入れ、私に「羊の赤ちゃんにミルクを飲ませる時間だから、一緒に行かない?」と言いました。

普通はお母さんからおっぱいをもらって大きくなるのだけど、この子は3つ子でおっぱいが足りなく栄養不良だったので、哺乳を始めたとのこと。

私は日本にいた若い頃、愛知県の観光牧場に勤めていて、主に子牛の哺乳と小動物の世話を担当していました。ですから子供達がミルクを美味しそうに飲む姿をまた見られると思うと心が弾みました。羊たちは離れた放牧地にいましたが、ディアナさんが「スプラウト!」と名前を呼ぶと、メエ~エと返事をしながら小さな羊が群れから離れてかけてきました。

ディアナさんが飲ませてあげてと、私に哺乳瓶を渡してくれました。

なんて久しぶり!なんて可愛いの!なんて愛おしいの!

本当に本当に、久しぶりの感覚に楽しくて気持ちが舞い上がっていました。

すると今は「チョチョ」と言う名前をもらったお嬢がウリウリと寄ってきました。

 

「チョチョはやきもち焼きだから、彼女も撫でてあげて」

彼女の言葉に、お嬢が本当に可愛がってもらっていると分かりました。でもお嬢が元は我が家にいたことはどうしても言えませんでした。

 

それはディアナさんが「チョチョはパト(我が家とディアナさん宅の間の農場に住む女性)の所に居たのよ。可哀想にご飯も満足にもらえなくってガリガリだったから、私が保護したの。」と怒って言うからです。

 

「あの~。実は我が家の子だったんです。そんなにガリガリじゃなかった筈なんだけど。正直言って、ここの愛犬家の犬たち太り過ぎよ!」

なんて決して言えない雰囲気でした。パトさんが犬にご飯を満足にあげていないのは事実だし、パトさん一家が農場に入った犬を散弾銃で撃つのは周知の事実だし、私たちよそ者を毛嫌いしているのは有名だし、申し訳ないけどここは悪者になっててもらうことにしました。

 

お嬢はいなくなってからも、時々元気な姿を見せに来て安心させてくれていましたが、ディアナさんの所いると分かって、彼女の家で会ってからはもう来なくなりました。

お嬢は、私の気持ちを全部分かっていたんです。

 

外のテーブルで山を見ながら、羊たちの声とお嬢のいびきを聞きながら、手作りピザと自家栽培野菜のサラダを頂きながら、パタゴニアで暮らしている自分を不思議に、そして最高に幸せに感じていました。

 

自分の直感に従って、自分の本当の幸せを自分で見つけて行ったお嬢。

私は大丈夫。しんどい事や困った事が多少あっても絶対大丈夫。

楽しい事、幸せな事、嬉しい事を自分で見つけて、お嬢みたいに自分を信じて進んでいこうと思います。

お嬢、ううんチョチョ、良い事一杯教えてくれてありがとう。

 

今、私の周りの全て、そして私自身が大好きになってます。

 

ところで、パタゴニアにもやっと春が訪れました。我が家ではさくらんぼとプラムの花が満開です。街では八重桜が咲き誇っています。

ありの花行列。

ありの王国でも今晩は桜祭りの宴会でしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

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