時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

速かった。地球の自転。

私は豆腐作りの為、冬でも朝4:00には起きます。先ず薪ストーブに火をつけ、猫の福に朝ごはんをあげ、それから外に行って犬達におはようを言いながら星を見ます。

曇りで空が暗い時は、家の前にそびえ立つ大松を見ます。どんなに寒くてもそうして1日を始めないと気持ちが落ち着きません。

新月の日は真っ暗で星が綺麗で、満月の日は周りが驚くほど明るいです。

 

14日の夜、犬達におやすみの挨拶をしに外に行くと、東から大きな満月が登るところでした。あまりの大きさと、明るさと、木々の間に浮かんだ月の風景が見事で思わず声が出ました。

そして翌朝。雲ひとつない空には明るく満月が輝いていました。

 

その日は豆腐の卸と日本語教室でエルボルソンの街へ行く日でした。

8月に入って日の出が早くなったというものの、私が街に行く時間8:00は丁度夜から朝に変わる時間の狭間でまだほんのりと薄暗く、空は群青色でした。

山道を下って行く時、雪を被ったアンデスの山の上に大きな明るい満月が輝いていました。あまりに綺麗で、写真を撮ってみんなに見てもらいたいと思いました。でもカーブの多い下り坂です。止まるわけには行かず、もう少し先の開けた所で止まろうと運転していました。

ところが、月があっという間に山に沈んでいくのです。その速い事。

やっと止まれる場所に着いてみると、もう月がほとんど山に沈むところでした。

そしてあたりは日の出と共に、どんどん明るくなっていきました。

 

地球は時速1700kmで回っているそうです。

数字で見ると物凄い速さですが、今までそんな事、考えたこともありませんでした。でもその時初めて地球の回転の速さを実感しました。

そして改めて思いました。

この速さと同じくらい、自分のこの世界での時間は過ぎ去って行っているんだと。

地球の歴史から思うと、私の時間なんて一点さえも残らない程の微かな瞬間。

 

あっという間に終わってしまう時間だけど大切に大切にしていきたい。だって私にとってはかけがえのない貴重な時間なのだから。

今ここに生きている不思議と嬉しさ。

どんな事があっても受け止めていこう。感謝して楽しんでいこう。

沈んでいく満月を見ながらそんな事を思っていました。

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