時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「最初の頃に」

木曜日の日本語教室の日。教材を抱えてエルボルソンの文化センターの教室に入って、 私は一瞬「あれ???」と立ち止まってしまいました。

いつも私が一番に教室に入り、生徒さんを待つというパターンです。ましてその日は大学の試験期間中で、来るのは遅刻の常連アンドレアという20歳の女の子だけの筈だった のです。ところが誰もいないと思って入った教室の窓際に、一人の女性が立っていたのです。しかも「初めまして」と日本語で挨拶をされ、「えっ?何?どなた?」と戸惑ってしまいました。

彼女、嘉奈子さんは新婚旅行で世界旅行中の日本人女性http://blogs.yahoo.co.jp/cinamonhoukiで、なんと、私達のサイトを見てわざわざ日本語教室にゲスト参加の為に来て下さったのです。

事前にメール連絡下さっていたのですが、私達の家には電話が無く、エルボルソンの町まで行ってWiFiでメールを開けるのは週一回。当然彼女のメールも読んでいませんでし た。私からの返事も無いのに、旅行中の貴重な時間を割いて来て下さった事がとても嬉 しかったです。

暫くして、「おはよ〜」と入ってきたアンドレアも驚いて一瞬動作が止まりましたが、 嘉奈子さんの暖かい雰囲気に直ぐにうち解け、とてもとても楽しい2時間を過ごすことが 出来ました。

生徒の為に、もし機会があれば私以外の日本人と話をさせてあげたいと思って以前ブログに「ゲスト参加大歓迎」と書きましたが、正直言って実現するとは思っていませんでした。

嘉奈子さんに時間が無く、この教室の2時間だけがお話出来る時間だったので、主役のアンドレアはそっちのけで私の方があれこれ話をしてしまいました。

彼女は「静かで良い所」「美味しい物が一杯ある」「人が優しい」と、アルゼンチンも エルボルソンもとても気に入っていました。でも私は「そうかなあ?」「あそこは以前 はもっと美味しかったけどなあ。」と、その一つ一つに否定的な相づちを打ってしまっていたのです。そして、気付きました。

私だって、ここに暮らし始めた時は全てに感動して、全てに喜んで、彼女の様に素直な気持ちで周りを見ていたのです。それが15年経つ内に過去の良いところだけを懐かしんで、変わってしまった今の悪い部分しか見ていなかったのです。

暮らすと言うことと、滞在すると言うことは違います。暮らして見なければ決して見えない「辛さ」や「悔しさ」はあります。でも、それだからこそ「感動」や「優しさ」も深く感じることが出来るのです。

嘉奈子さんのお陰で、忘れかけていた「最初の頃の素直な気持ち」を取り戻す事が出来ました。

しつこい様ですが、木曜日(年末年始と祝日以外)10:30からお昼休みをはさんで5:30まで、エルボルソンのCasa de la Cultura(Diag.Merino 3270)に居ます。是非遊びにい らっして下さい。日本語教室でお待ちしています。

最後に「嘉奈子さん。ありがとうございました。良い旅を。Buen Viaje!」