時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「友人」


ラウラは仲の良い友人です。
ブエノスアイレスに住んでいた子供の頃、日系人の隣人の家によく遊びに行って、きんぴらとか味噌汁とかまんじゅうなどをご馳走になったそうです。小学生の頃から日本語教室に通い、日本人も日本も日本食も大好きです。四年前JICAの研修に合格して4週間日本へ行き、主に北海道の帯広で観光業の研修を受けました。片言の日本語を話し好奇心旺盛なので、日本では自由時間に一人でバスや電車に乗って出掛け多くの友人を作ってきました。憧れの日本へ行って、ますます日本好きになって帰ってきました。こちらの人に日本の良さを紹介してくれるし、街で出会った日本人観光客にも親切です。知り合った時は独身でしたが、結婚して男の子を授かり、現在は街の観光局で働きながら子育てをしています。
8歳の息子のダンテくん。生まれてから一度も髪の毛を切った事がなく、腰まで伸びた髪を三つ編みに結っています。
「髪切らないの?」と聞くと、いつでも「切らない」の返事。今はそうでもありませんが、小さい頃は必ず女の子に間違えられていました。でも周りの目を気にしたり、規則に縛られたりせず、自分らしく好きな様に出来る事は良いことだなあと思います。御多分に洩れず日本のアニメが大好きです。
旦那さんのマルセーロは音楽家でバンドを組んでミニコンサートをしたり、お祭りで歌ったりしていますが、正直エルボルソンにはそう言ったバンドが沢山いて、生活はなかなか厳しい様です。ラウラと一緒になるまでは日本人と親しく付き合う機会はなかったのですが、日本から滞在客が我が家に来ると、時々ラウラ一家を昼食に招待して一緒に過ごすので、今ではお寿司も豆腐も食べるし、味噌も大丈夫だし、特に日本的カレーライスを気に入っています。
先日もラウラ一家と日本へ帰る大切なお客様の送別会をしました。その時マルセーロが自作のギターを持って来て歌を歌ってくれました。今は音楽活動の他に楽器作り、主にギター作りをしています。
私は音楽は全然わかりません。音程がなく自分でも呆れるくらい音痴です。でもマルセーロの歌は素敵だと思いました。心が温かくなりました。貧乏でも活動の場がなくても、自分の好きな道を進んでいる人は、周りを温かくできるのだと思いました。
私には何があるだろう?
どんな事で周りの人を温かくしてあげられるだろう?
それ以前に夢中になれるものがあるだろうか?
マルセーロの歌を聴きながら、賢い人でも良い人でもお金持ちでもなく、私といると温かいと言ってもらえる様な人になりたいと思いました。
ラウラは親切なので日本人観光客を自宅に招待したりお世話をしてくれます。でもどうかその好意にただ甘え利用する事だけはしないで下さい。
でも音楽好きで手作りギターに興味のある方。アルゼンチンのローカルバンドに興味のある方は、是非私にご連絡ください。

農場ではさくらんぼやスモモの花は散り始めましたが、代わりにリンゴの花が咲き始めました。私はこの時期の薄紅色の蕾がとても好きです。