時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「迎春」


もうすぐ8月ですが、ここパタゴニアはまだまだ寒い日が続いています。
数年前までは7月の中旬には、野鳥のシギの仲間のテロが農場にやってきて巣作りの準備を始めていました。私はテロのキーキーという感高い声をきくと、ああ春がやってくるんだなあと思っていましたが、今年はまだ一度も彼らの声を聞いていません。春が来るという気持ちよりも、まだ冬は続くなあと感じます。なんとなく以前よりも季節が1ヶ月くらいずれて遅れている様に私には思えます。
ずっと雨が降らず心配していましたが、7月に入ってから僅かですが雨が降る様になりました。
里の雨は山では雪になっているようで、晴れの合間に山が見えると雪景色をした山が太陽に輝いてとても綺麗です。
人間の私には春の気配も感じられません。でも農場の自然たちは春を迎える準備を始めていました。
こちらでは何故か「日本花梨」と呼ばれている木瓜。気がつくと枝には小さな赤い蕾が幾つも付いています。嘘か本当か、ある日本人の方が「まだ寒いうちに花を咲かせるから、おとぼけてるなあって、木瓜と言われているのよ」と教えてくれました。この実は花梨ほど大きくも香りもよくありませんが、毎年沢山実ってくれるので、はちみつ漬けにして咳止めの薬にしたり、林檎と混ぜてジャムを作ったりしています。花が咲くと蜂鳥が蜜を吸いに来ます。きっと蜂鳥たちの最初の花の蜜なんでしょう。
そして木瓜の蕾がつき始めると、猫柳も可愛い白い蕾を膨らませ始めます。面白いことに猫柳もこちらでは「日本柳」呼ばれています。
農場の春一番がどちらも「日本・・・」と呼ばれていることに面白さを感じます。

世界中が今揺れています。ニュースを見ても楽しい話題は少ないです。ニュースがそう言う方向に人を先導しようとしている気もします。何が本当か分かりません。きっと全てが本当で、全てが嘘なのでしょう。それは受け取る人の問題です。
私は信念がもろいので、周りの影響を受けて直ぐに落ち込んでしまいます。ですから今はニュースは見ません。現実を見ろと言われる事もあります。でも悪口、不平不満を言いたくなるのも現実なら、自分の周りの楽しい事、美しい事、幸せな事に目を向け幸せを感じるのも現実です。いつも自分の心をを元気に保っていこうと思います。
農場の細やかな自然は私に元気を分けてくれます。
何時までも大切にしていきたいです。


-