時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「阿吽」

粘土で小さなお地蔵様や動物達の一日一体作りを始めて一年です。
毎日は作れませんでしたが、それでも200体以上は作ってきたと思います。ストーブで焼いた後は、農場の守り神として木の切り株の上に乗せてきました。ですから農場を散歩すると、あちこちで出会うことができます。雨や直射日光で風化してしまった子もいますが、私はそれで良いと思っています。自然に任せ農場の土にまた還っていけるのは、すごく幸せなことだと思います。
一日一体は変わりませんが、今年から必ず二体を対で作るようになりました。
「阿と吽」
最初の音で開口音と最後の音で閉口音。
密教で宇宙の初めと究極。悟りを求める菩提心と、到達する涅槃。
吐く息と吸う息。
対立する二つのもの。

難しいことは分かりませんが、私は阿吽の呼吸、対でいる事の心強さ、信頼感、安心感を大切に思うようになったからです。それは私の希望、夢、期待だからかもしれません。

作り始めたきっかけは怒りからでした。それがいつの間にか怒りは消えました。形になっていく粘土を見て、怒りの顔は嫌だ、笑っている方がずっと良い、それなら笑って作らなきゃあ失礼だと思ったからです。
自画自賛かもしれませんが、私は自分で作ったこの子達がどれもみんな好きで愛おしいです。みんなに出逢えるから農場を歩くのが楽しいです。そして出会った時、いつでも微笑んでいてくれる事にホッとします。

ゆとりがなく、ここ暫く作っていません。でもこの冬たくさんの松を倒したので切り株がたくさんあります。主のいない切り株は心細いです。
作ろうという気持ちがふつふつと湧いています。

いつでも笑った顔。楽しんでいる顔。幸せな顔。
私だけじゃなく、この子達を見た人達が思わず微笑んでくれる、そんな仲間達をこれからも作り続けていこうと思います。