時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「ラゴプエロ市文化センターの名物小鳥」

nojomallin2008-03-27

一昨年縁あって、お隣の市ラゴプエロの文化センターに焼き物用薪窯作りに行きました。レンガや粘土などの必要材料は揃っていましたが、窯作りはほとんどが夫と私だけの作業でした。その文化センターでは焼き物教室も開かれていたのですが、窯が無く、作品は先生の自宅の電気窯で焼いていたようです。所長さんは作った作品を文化センターで焼くところまでしたいと思い、つてを頼って薪窯作りが出来る夫に依頼してきたのです。ただ教室の先生は薪窯の経験がなく、あまり興味も無かったことから、窯作りは焼き物教室の実習にはならず、私達だけの作業となってしまいました。けれども私は薪窯を作った事が無く、これはとても良い機会だと思って作業を始めました。先ずは基礎作り。それから草と粘土と砂を混ぜ、水と合わせて良く踏み込んで窯用の粘土を大量に作り、その粘土を使いながらレンガを組み立て、立ち上がった窯にその粘土で厚みを作って壁にして・・・とお弁当を持って何日も通いながら作業を続けました。窯作りは決して楽で綺麗な作業ではありません。粘土は重いし、踏み込み作業は体力と持久力が必要です。でも、辛い作業ではありませんでした。物を作る、それも初めから作ると言うのはなかなか楽しいものです。そして焼き物をする上で、ただ作品を作るだけに比べ、窯作りから始めると言うことは、ずっと贅沢で貴重なことだと思ったのです。そして窯作りの最中、私を更に楽しくさせてくれたのが一羽の野鳥でした。私達が作業を始めると、どこからか現れて車のサイドミラーに止まって私達を見つめるのです。時々は鏡や窓に映る自分自身と遊んだり、さえずりながら周りを低く飛び回ったり。あまり近くに寄ると飛び去ってしまいますが、また直ぐにやって来て私達を見つめるのです。後で聞くと、この小鳥はよくこの文化センターに遊びに来るそうです。決して人に触れさせる事は無いけれど、車を止めるとサイドミラーに止まって鏡で遊ぶのだそうです。

ラゴプエロ市もエルボルソン市同様、もしかするとそれ以上に観光開発の波が押し寄せています。殆どが舗装道路に変わり、整備という名目で自然林は切られ、川はコンクリートで覆われています。数少ない野生動物にとっては決して住み良い環境とは言えなくなってきているでしょう。自然界に食べ物が無くなってエサをねだりに来るのではなく、この小鳥の様に無邪気に、ただ人間の近くで遊ぶ姿を、私達はもっともっと大切にしなければいけないと思ったのです。