時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「木を切る フウ〜」

カラカラの干ばつの夏から、曇り、雨のぐずついた秋になりました。厳しい寒さも無く、アンデス山脈の紅葉も例年より色あせていたような気がします。
冬籠りに重要な薪も十分に蓄えてあるので、作陶や日本語教室の教材作り、習字など家の中でずっとのんびり過ごしていました。
ところが金曜日から珍しく青空が広がり、かと言って寒波も無く、家の中にいる事がもったい気分になりました。
そこで本当に久しぶりに、3ヶ月ぶりに、林に入り立ち枯れの木を切り倒しに行きました。直径20センチくらいの私が切り倒すにはちょうど良い太さで、小道の脇で周りに引っかかる様な木も無い最高の状況の木がありました。
夫に研いでもらったノコギリの切れ味は最高です。深呼吸しながらゆっくりと同じ速度でノコギリを引いていって、15分かからずに切り倒す事ができました。
枝も上の方に少し出ているだけで、まっすぐに伸びた素直な木でした。
それを運べる長さに4等分に切り家の近くの薪割り場へ運び、そこで枝払いをし、ストーブに入るくらいの長さ30センチに切りそろえます。太い場合はその後に薪割りがあるのですが、今回は必要なさそうです。
私が久しぶりに木を切りに行ったので、犬の姫ちゃんが大喜びで走り回っていました。この子は何故か私にべったりでどこでも付いてきます。
おじいちゃん犬のパクも、お気に入りの靴底を咥えて付いて来て、林の中で静かに咬み咬みしています。
吹く風は冷たいのですが、作業を続けているとそれも心地よく感じます。
私はこの作業がとても好きです。ノコギリで木を切るときは、いつもこれまで生きてきた木の命を感ながら、心に溜まったいろんな思いを整理する事ができます。
本当ならもっともっと長生きする筈だったのに、こんなに若く枯れてしまって申し訳ない、ごめんなさいと言う気持ちと、暖かい暖房になってくれてありがとうという気持ちと、ここでこの歳になってもこうして木を切っていられる幸せと、色んな事を許せないという思いと、許さなきゃあという思いと、信念を持とうという決意と、素直に生きようという決意と…。
そして最後はいつも思うのです。
ここで私は生きさせてもらっているんだ、私も自然の一部なんだなあと。
この先自分がどこに居ても、何をしていても、今こうしてこに居られる事。今まで居られたことを感謝して大切にしていこうとしみじみと感じました。

10月の大統領選に向けてこれから各地で州知事選、市長選が行われます。地区によっては選挙後、反対派などが荒れる場合もあります。神経質になりすぎる必要はありませんが、人が集まって危なさそうな所には、やはり近付かない方が賢明です。
またパタゴニア地方はこれから冬は、雪や悪天候で交通も乱れがちです。ゆとりを持った移動計画を立て下さい。