時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「輝き キラリ」

パタゴニアは秋も深まりました。風が吹く度黄葉した葉がカサコソ大きな音をさせて散っていき、少しづつ寂しい風景に変わっています。
マイナスに下がる朝も増え、一日中薪ストーブを焚いています。
雨も多くなってきています。やっと夏が終わりました。やっと、というのは今夏は特別干ばつが酷く山火事が多かったからです。
近郊だけで40以上の放火による火事がありました。特に隣の州の原生林が燃えに燃え、40000haが焼けました。この数字、大雑把に言えば九州の面積に匹敵します。
消火活動も、火を消す事は不可能で何とか延焼を食い止める事に必死でした。
何日も燃え続け、200キロ以上離れた我が家にも煙が流れてきて、太陽がオレンジ色にかすむ日もありました。結局雨が火を消してくれました。
何故放火するのか?
自然林は私有地であっても勝手に木を切ることができない法律があります。けれども燃えてしまったら、薪として売れ、土地を更地にして家や道路を作ることが出来るからです。
また山火事後に不法占拠で勝手に掘建小屋を建て住み着いてしまう人達もいます。屋根のある家を作って住み着かれてしまえば、簡単には追い出せないのです。
燃え続ける山を見て、そこに住む野生動物たちや、厳しい気候の中でゆっくりゆっくり育ってきた植物たちの悲鳴を聞き涙を流す人も居るけれど、欲に目が眩んでもっともっとと笑う人も居るのです。
法律を変えろと言う人もいます。木を切れないから放火で燃やしてしまうんだと。でも私は法律が変わって木を切れる様になれば、ここぞとばかりに伐採が進み、結局山火事で燃えてしまったのと変わらない結果になる様な気がします。
人間の欲には限りがありません。
その欲の深さに圧倒されます。
私に出来ること。それは種を播き続ける事だけかもしれません。
播いても播いても踏みつけられ、切られるだけかもしれないけれど、それでも、出来る事を続けていくしかないのでしょう。

播いた種から芽を出し、気がつくと実を結んでいたり、見事に黄葉してくれている命。
私の周りにある命の輝きを大切にしていきたいと思います。