時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「素敵な贈り物 ホクホク」

地球規模の乾燥温暖化。残念な事にパタゴニアだって例外ではありません。
3月から農場のあちこちに出始めるヌメリイグチきのこ。今年は6月の今まで両手で数えられる程度しか確認していません。
松露きのこも、年々減って来ていましたがそれでも少しは収穫があったのですが、今年はついに幻となってしまいました。
きのこ好きな日本人としては寂しい限りでした。
ところが玄関前の広葉樹の下に、突然きのこが生えているのを発見しました。このきのこ正式名は分かりませんが、私達は「ちょりきのこ」と呼んでいます。それは移住して最初の家族となった犬の「ちょり」に色と雰囲気が似ているからです。
数年前我が家にホームステイした女性は「ふわふわきのこ」と呼んでいましたし、偶然この季節に滞在した友人は「スポンジきのこ」と言いました。
このきのこ、バター炒めすると歯触りも風味も香りも抜群に美味しいのです。醤油をちょっとたらせば絶品です。
以前も別の場所でまとまって生えていた事がありましたが、我が農場ではあまり見かけないきのこでした。それがこんなにも家の近くに、まとまって生えてくれて感激してしまいました。
夫と二人だけで楽しむのはもったいないような気がしていたら、ブエノスアイレスでシニア隊員として赴任していた女性が、帰国前に我が家を訪問してくれたので、一緒にワインの肴として楽しむ事ができ、楽しいひと時を過ごす事ができました。
今夏はアルゼンチンパタゴニアで広大な面積の自然林が放火によって焼けてしまいました。アンデス山脈の氷河も後退し、水不足の地区も増えています。
ここだけではなく世界中で自然災害はおこり、相変わらず戦争だ、環境汚染だ、経済危機だ、治安悪化だ、虐待だ、と暗くなる話題が多いです。個人の力だけではどうしようもなく、どうしたら良いのかさえ分かりません。そして自分の身の回りでさえ誤解や憎しみや悲しみが途切れる事はありません。いくら深呼吸しても間にあわずに息苦しくなってしまう事もあるけれど、「ああ、まだまだ楽しい事も嬉しい事も一杯あるんだな」と思わせてくれる一瞬も多いです。
きのこが生えた、美味しかった、友達と一緒に楽しめた。
そんなささやかな出来事。でもそれはとてもとても大切で幸せな事だと気付きました。
パタゴニアの秋の素敵な贈り物。
目を向ければ、自然からの素敵な贈り物が私の周りにはあふれています。
当たり前の事ですが、1日を大切に丁寧に過ごして行こうと思いました。

5月末から雨が多く、自然林の減少で、降った雨が大地に吸収できずそのまま流れてしまい、峠では土砂崩れが時々発生しています。通行止になってしまう事もありますから、移動の場合は道路情報や天気予報に注意して、余裕を持った計画を立て下さい。
また、急に川の水かさが増す事もありますから、危ない所には近付かないようにご注意ください。