時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

嬉しかった。農場のアマンカイ

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1月末から雨が降らなくなり、どこもかしこもカラカラに乾いてきました。
朝露さえ下りなくなりました。

放火による山火事が広がっています。毎年毎年繰り返される事です。
日本の様に放火に対する刑罰が殆どなく、犯人が分かっていてもどうすることも出来ません。
放火も犯罪として逮捕するべきだという人もいますが、殺人をしても数年、数ヶ月で出てきてしまう国です。根本的な解決にはなりそうもありません。

我が家は草を刈らず、そのまま放置しています。手が回らない事もありますが、草が茂っていた方が大地に水分が保てるからです。
ボルソンの町へ入る国道沿い。
以前は草のしげる原っぱでしたが、整備して遊歩道を作りました。草を刈り、根こそぎ耕した後、芝生を植えましたが、しょっ中芝刈りをして、枯れない様に一日中水を撒いています。
歩道は水浸しで歩けず、人は車の走る道ギリギリのところを歩いています。
一体何の為の遊歩道か?芝を刈るからエネルギーを使っての水やりが必要になるんじゃないのか?といつも不思議な気持ちで見ています。

我が家は入り口から家まで500mくらい細い車道が続いています。両側は林で、道の上に枝が伸び、所々緑のトンネルを作ってくれています。
2年連続の大雪で木が倒れたり、枝が折れたりしたのでこの林の整理をしました。すると少し開けた場所にアンデスの山百合アマンカイが広がりました。
今年は道の両側にも広がり、1ヶ月以上可愛い花を咲かせています。

私はこの花が好きです。アマンカイが蕾をつけると、「ああ年が変わるな」といつも思います。
お正月前後が初咲きの時期です。
百合といっても小さく、百合根も細くて、食べられますが、わざわざ取って食べたいとも思いません。

今年、車道の両脇のアマンカイが、私をとても楽しませてくれました。
それは両側の花の色の濃さが違っていたからです。
片方は普通の黄色。もう片方はそれより濃い山吹色なのです。
山吹色の花は、農場の隅の日陰の湿気の多い場所に少しだけひっそりと咲いていました。毎朝犬達と見回りで農場を回っていた頃、そこでそのアマンカイを見るのが楽しみでした。
けれども昨年から、坂を下りたり登ったり、水路を飛び越えたりするだけの体力がなくなってしまって(気力かも?)、行かなくなりました。
それが、毎朝犬達と散歩する歩きやすい車道脇に、山吹色の花が咲いたのです。
あんな乾いた場所に…。
私にはそれが 、アマンカイ達の大きな優しい贈り物に思えました。

出来ない事や行けない場所も増えてしまったけれど、アマンカイ達から
「そんなの大した事じゃないよ!いつも一緒にいるよ。」と言う大きなメッセージを受け取ったのです。

ありがとう。
私を包む自然は、いつも本当に優しく温かいです。