時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「パタゴニアの秋の夕焼けは黄色く明るいんです」

パタゴニアは秋を迎えています。
我が家では果実の収穫がありませんでしたが、もっと標高の低い地区では例年にない豊作だとか。町の八百屋に地元のりんご、洋梨、桃、栗、クルミ が山の様に積まれています。
またジャガイモも30kg、50kgの袋売りしています。
3月最後の日の朝、マジン村に初雪が降りました。お昼には止んで溶けましたが、随分早い初雪でした。
今年の冬は早く、寒さが厳しくなりそうです。
その所為か、紅葉も早い気がします。
4月に入ったばかりなのに、里ではポプラやヤナギの葉が黄色く変わり、リンゴやもも、プラムの果樹たちも黄色、黄緑色、山吹色、だいだい色などに 秋化粧しています。
私が育った場所は岡崎平野のど真ん中。田んぼに囲まれて山も海もありませんでした。ですから私は秋を紅葉ではなく、稲刈りで感じていました。
今は木々の黄葉、アンデス山脈の紅葉で秋を感じています。

日没も日に日に早くなっています。真夏は夜10時でも明るく、早寝の私はまだ明るくご近所が夕食の準備でも始めようか・・・という時間にはもう寝 ていましたが、今は8時には暗くなっています。

我が家の夕食はおかゆにみそ汁、簡単な一品だけですが、その準備を始める時間にアンデスの山に夕日が沈み始めます。
そして我が家で、一日のうち一番外が光り輝き明るくなる時間が訪れます。太陽が山に沈むまでの数分が特に見事です。
銀色の光が谷に沈む太陽から真っ直ぐに農場に届き、黄葉した木々の葉に反射して、農場中を黄色く明るく輝やかせるのです。
その瞬間は家の中に居るのがもったいないと感じ、外に飛び出し明るい空気を胸一杯に吸い込みます。
体中が元気になって、自分も木々たちと同じように輝ける気がします。
ちょっと古いですが、私の大好きなマンガ「ドラゴンボール」の超サイヤ人の強さと優しさを実感できます。

果樹が大きくなって、その子供たちも育ち、農場の秋の黄金の光は毎年毎年広がっています。
人工的に決して作り出す事の出来ない色、空気、光、音。
自然はこんなにも優しくて美しいんです。それを素直に感じる事ができたら、大地に種を播く喜びも、もっともっと理解してもらえるんじゃない かと思っています。