時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

どひゃ〜!いつの間に?

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5つ以上見つけました


22歳の時、農業を勉強したいと思い立ち、北海道札幌の農業専門学校へ入学しました。

午前中、学校の農場で農作業する代わり、学費も寮費も食費も無料と言うのが大きな魅力でした。

あの当時は同級生は30人位の全寮制で、現役生と、社会人だったり四年制の大学を卒業してきたりした人が半々、ブラジルの日系人留学生もいたりして、私にはとても刺激的な楽しい学生生活でした。

果樹実習で初めて西洋梨を食べた時の感動、自分の畑で作物を育てる喜び、鎌の研ぎ方、挿し木の仕方、チーズやハム作りの実習。札幌の四季折々の美しさも忘れられません。

その学校には寮から牛舎までの間に結構長いポプラ並木があり、新緑、黄葉、雪景色の変化を楽しみました。

そのポプラ並木には秋にキノコが生えました。赤い傘の上に白い斑点がある、正しく絵本で出てくる御伽の国の代表的なキノコでした。

ベニテングダケ。猛毒ではないけれど、毒キノコの仲間なので食べず、写真に撮って楽しむだけでした。

後に知り合った長野の農家の方が、毒抜きをして食べると美味しいと教えてくれましたが、食に好奇心が無く、食べたいとは思いませんでした。

 

パタゴニアの我が家にもキノコが生えます。代表的なのは春のアミガサタケと、秋のヌメリイグチタケです。どちらも人気のキノコで、街のレストランでは地元キノコとしてスパゲティなどのソースに入れて出されています。

以前は季節になるとキノコ狩りをして乾燥させ、ブエノスから遊びに来た友人のお土産にしたり、観光客に売ったりしていました。

でも最近はその気力がなくなり、旬に少量を楽しむ程度で乾燥保存はしていません。特にキノコの生えるのは林の中。平衡感覚の怪しくなった私は、怪我するのが怖く探すこともやめました。

 

ところでアルゼンチンは販売禁止ですが、自然のマリファナを自分で吸うのは合法なので家庭菜園感覚で栽培されています。コカの葉に至っては、北の地方ではお茶としてごく普通に売られ飲まれています。

そう言う関係で、多くの人は自然の植物からの覚醒剤にはあまり抵抗はありません。

そして先のベニテングダケも覚醒植物として人気があるのです。

先住民が儀式の時に利用していたりもします。ただこれは経験者の元で、量と方法を守って食べる必要があるそうです。

数年前、初めて我が家に一本このベニテングダケが生えました。私は面白いな、珍しいな、西洋では幸運の前兆と言われているしと、ただ単純に喜びました。でも数日後、誰かが半分だけ千切って持って行ってしまったのです。酷いことする!とがっかりしましたが、それは誰かが食べて覚醒する為持って行ったのだとずっと後で知りました。

 

私は自然のものなら、コカを噛んだり飲んだり、マリファナを吸うことに嫌悪は感じませんが、どうしてそう言うものを使って覚醒する必要があるのか不思議です。

ぶっ飛ぶとか、感性が研ぎ澄まされるとか、そう言う感覚は正直分かりません。

ブエノスの人の多くはストレス解消の為には必要だと言います。

 

生きるって面白いと思います。

辛いことも悲しいことも悔しいことも情けないこともあるけれど、考え方ひとつでそれは、面白いこと楽しいこと嬉しいことに変えることが出来ると思います。そしてそう気持ちを変える時、コカやキノコやマリファナの力よりも、自分の心の力の方がずっと信用でき頼りになると思うのです。

雨上がりに数ヶ月ぶりに家から離れた林を散歩しました。そしてそこに数本のベニテングダケを見つけました。ええ~!いつの間にこんなに生えたの?と驚きました。

去年は確か無かったはずです。

長雨で大きく開いてぶよぶよであまり綺麗じゃなくなっていましたが、とても嬉しかったです。そして面白かった札幌の寮生活を思い出しました。

 

これは幸運の報せ。良いことの前兆。

今世界は大きく揺れていますが、私は私。自然と全ての命に感謝して、自分の出来る事を出来る範囲で自分らしくやっていこうと思います。