時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

パタゴニアの秋の中で

「ああ綺麗だな」

1日に何度も声にでます。

 

パタゴニアは日に日に秋が深まっています。

アンデスの山頂も南極ブナの紅葉が始まりました。里では防風林として至る所に植えられているポプラが、透き通るような明るい黄色に変わりました。

りんご、プラム、さくらんぼの果樹や柳やリラや楓や西洋ニワトコの葉が深い黄色や紅色や鮮やかな赤に変わり、農場を秋色に染め上げています。

そして風があると葉が踊りながら散っていきます。その時、シャラシャラと歌います。一瞬小川が流れる音に聞こえます。

犬達がかくれんぼしていても、積もった落ち葉を踏むカサカサという乾いた音で直ぐに見つけられます。

秋には色と音があるのです。もちろん秋の香りもあります。

 

毎年毎年繰り返される風景ですが、毎年毎年その美しさに新鮮な感動を覚えます。

 

今年はりんごの大豊作でした。引っ越した時農場で、たった一個だけりんごが実りました。それは世界一美味しいりんごでした。そしてその時、いつか食べきれないくらいのりんごをこの農場に実らせたいと思いました。

「芽を出せ、大きくなーれ」と25年間種を蒔き続けました。

今農場には30本以上の実のなるりんごの木があります。不作の年でも必ず何本かの木には実りがありました。

そして今年はすべてのりんごがたわわに実りました。手入れも何もしない殆どが種から育ったりんごです。野生のりんごと言っても間違いではないでしょう。実は小さいですがみんな活き活きしています。友人がジュース用に、保存用に拾いに来てくれました。300kg近くを持って行ってくれましたが、まだまだ木にはりんごが残っています。誰かにお裾分け出来るくらいになりたいと言う長年の夢が叶いました。

 

薪ストーブも毎日つけるようになりました。炎を猫の福や犬の悟り、大将、フィナと静かに見つめる至福の時を過ごしています。

 

世界はコロナだ、ワクチンだと騒がしいです。

日本政府は放射能汚染水(処理水とは思えません)を海に流すと決めたようです。

未だにオリンピックにしがみついています。

 

自然は美しく優しいのです。そして人はその自然の一部でしかないのです。私はそう思います。

いろんな考えがあって、いろんな生き方があって、いろんな価値観があって、人それぞれです。

それをきちんと認めながら、誰もが今を楽しい、幸せだと思える未来を築くにはどうしたら良いんだろう?なんてパタゴニアの片隅で考えています。

 

 

 

 

 

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家の前の姫りんご

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町の楓