時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「2014年の始まりに思う事」

人間五十年
下天の内にくらぶれば
夢幻のごとくなり

織田信長が何時も舞い謡ったという敦盛の一番。

別に能に興味がある訳でも、織田信長を尊敬している訳でもありませんが、この一節はずっと心の中に引っ掛かっていました。
本来の解釈とはかけ離れているのかもしれませんが、人間五十年経験すると、本当に今まで見えなかった事、気付かなかった事、感じもしなかった事が 分かってくるものなんだなあと。今までの五十年以上の人生がまるで夢幻の様な気がします。

五十になった時、急に自分の残りの時間を意識するようになりました。それまでは、嫌な事があるとどう気持ちを処理していいのか分からず、この状況 がこれからも続くのか・・・と暗闇にどんどん引きずり込まれていきましたが、今はそんな事に関わっている時間がもったいないと思います。ずっと続 くわけない、いつか終わりが来る。それなら今の自分の時間を自分らしく使いたい。出来れば心豊かに笑って過ごしたい。
実際はとても難しい事です。五十年間のひねくれた私がそう簡単に変われる訳がありません。でも変わろう、笑おうと思う気持の方が大きくなりました。
人間五十年・・・だからあとは余生・・・とは全然思いません。それよりもこれからが本当の人生だと思います。そういえばスサーナもカロラもジュンも、五十過ぎてから打ち込める事や真の伴侶を手に入れました。みんなとても輝いています。

今まで手放したくなくてずっと握りしめていたものを、これからは少しずつ手を開いて放してみようと思います。
大切だと思いこんで心のつぼに貯め込んでいたものを、少しずつ外へ流していこうと思います。

握りしめていたから、貯め込んでいたから、新しいものが入って来る事が出来なかったんだと気付きました。きっと空っぽになってしまう事はなくて、僅かでも新しい何かが始まるのだと信じます。直ぐに損得勘定をする強欲な私には物凄く実行するのが難しいですが、気付けただけでも人間五十年は価 値があったと思います。

パタゴニアの大晦日は例年のごとく0時に爆竹を打ち鳴らし、大騒ぎしていました。我が家の犬たちも興奮して吠えまくっていました。
翌朝5時に目を覚まし外に出たら、犬の「お豆」だけが居ません。この日は毎年、音に怯えた犬の行方不明が多いので随分心配しましたが日が高くなる前に帰って来てくれました。
元旦は友人家族と我が家で餅つきをしました。我が家には木の手作りきねと臼があります。四分の一日本人の子供たちが大喜びしてくれました。お年玉として五円をあげたらやはり大喜び。
でも2日からはもう町は平常に戻ります。南半球の真夏のお正月ですが、今年は雨風の寒い新年でした。

2014年を平穏に迎えられた事を感謝して、大切に日々を過ごしていこうと思います。
皆様にとっても価値ある素晴らしい年となりますように。
今年もよろしくお願いします。

要領の悪い私はてんてこ舞いで、お餅つきの写真を殆ど撮れませんでした。
もう一枚の写真は農場に自生しているアンデスの山百合アマンカイです。年末年始農場のあちこちを飾っています。