時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「続けること」

決して自慢できる事じゃありませんが、私の根気と集中力の無さは天下一品です。当然学校の勉強は嫌いでしたし、習い事も全て中途半端で、ずっと続けている事は一つもありません。
でも、電話もテレビもネットもないので情報に惑わされない平凡な毎日をたんたんと過ごしていると時間の感覚が随分変わって来た事に気付きます。そしてふっと気が付くと、以前の私からは想像できなほど、色んな事を投げ出さず続けているのです。
日本語教室もその一つです。
続けていると言ってもまだ5年ですが、まさかこんなにも自分の中で大きな存在になるとは思いませんでした。人様に何かを教えるという器ではない ですし、日本語教師の資格も経験もありません。でもエルボルソンで日本語を勉強したいというアルゼンチン人の女の子が、教えてくれる人を探しま わって最後に辿り着いたのが私でした。断るのは簡単でしたが、私でも何か出来るかもしれないと思い引き受けました。そしてアルゼンチンの日本語教師連合会の会員にさせて頂き、教材を揃え、年二回の講習会にも参加して、先輩日本語教師の方々に指導やアドバイスを頂きながらなんとか続けてきました。
エルボルソンの文化センターの教室を借り、最盛期には一週間に5クラスを持っていました。
ところが昨年末、文化センター存続問題から数か月閉鎖、やっと移転した文化センターで授業を再開したものの、その間にアルゼンチンの経済危機、超インフレが始まり、趣味で日本語を勉強出来る程ゆとりのある生徒さんはなかなか集まりませんでした。
アルゼンチン経済の所為ばかりでなく、私や私の授業に魅力が無いのも現実です。それでも有難い事に、生徒さんがゼロになる事は無く今日まで続いて います。
今は3人の生徒さんが居ますが、年明けには一人がブエノスの大学へ行ってしまうので淋しくなります。また文化センターの方針も不明で、新年度から教室を借りられるかどうかも分かりません。
でも私は例え誰も来なくなっても、文化センターが利用できるうちは日本語教室を続けていこうと決めています。誰かが短期でも日本語や日本文化にふれる機会を無くしたくないのです。何より私自身が日本語や日本を見直す良い勉強になります。
飽き症で好奇心もない、何をしても続かない、夢中になれる事が見つけられなかった私が、今はやり続けたいと思う事があります。ただ単に続けているだけで熟練した深みも鋭さもないと言われる事もありますが、今はそれでも良いと思っています。
好きだから続けられる。楽しいから続けられる。感動があるから続けられる。
自己満足の世界でしかありませんが、それが出来き、続けられる事を大切にして感謝いていこうと思っています。
写真は文化センター年度末発表展示会の様子です。