時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「早起きの楽しみ」

11月のパタゴニアは晩春。日が随分長くなりました。
朝5時過ぎにはもう薄明るくなり、太陽がアンデスの山に沈んでも暗くなるのは夜9時を過ぎています。
以前から早起きでしたが、今私は4時半には起きだして薪ストーブをつけ、豆腐作りの準備を始めています。春と言っても気温差の激しいパタゴニア。 真っ白に霜が降り、日が高くなるまでは吐く息が白い日も珍しくありません。
夜更かし朝寝坊のアルゼンチン。私のこの起床時間を聞いたら「ROCURA(狂ってる〜)」とみんな言います。
でも私がこんなにも早起きするのには、実は理由があります。
その1.星が見たい。
もう一年以上も前ですが、精神的に追い詰められ落ち込んでいた時期がありました。寝むれない日が続いていた時、真夜中突然空を見たくなり、外に出た瞬間、大きな星が長く流れたのです。数年ぶりに見た流れ星でした。その星が私の迷いを持って流れて行ってくれたのか、心 がすーっと軽くなりました。忘れられない一瞬でした。それから私は毎日星空を眺めるようになりました。野宿出来る内は良かったのですが、今年は未だに寒 く、とても野宿する気になれません。しかも日没が遅くなり、星が瞬くまでとても起きていられません。それで朝早く起きて星を眺めているのです。 12月になったらもっと日の出が早くなるので、私の起床時間ももう少し早くなりそうです。
その2.夜明け前の静けさを感じたい。
ここ数年のエルボルソンの人口増加には目を見張るものがあります。私の家の周りも例外ではありません。幸い我が家には木があってあまり隣家は見え ませんが、音と気配は隠す事が出来ません。以前は聞かなかった機械音、車の音、ラテン人が好むドンチャン音・・・・。
時代の流れですから仕方ありません。でも早朝はそんな音と気配が消え以前の静けさが戻っています。空気も澄んで奇麗な気がします。鳥たちも元気に さえずっています。ここに暮らせて良かった。今日も楽しく元気に頑張ろうと素直に思えます。
その3.花の香りを楽しみたい。
玄関脇につる性の灌木があります。何度聞いても名前が覚えられません。ある日本人の方が、スイカズラに似ているとおっしゃっていました。その花が今満開です。そして凄く凄く素敵な香りがするのです。この香りを言 葉で伝えられない文才の無さが情けなくて悔しいです。この花、活けても日中にも香りが殆ど無くなるのです。朝だけ周りを優しい甘い香りで包んでいます。一年の内今だけ、一日の内朝だけ味わえる香り。欲張りな私はしつこくしつこく深呼吸を繰り返し、目いっぱいこの花の香りを楽しんでいま す。
早起きは楽しいです。お天道様と共に暮らすのは心も体も元気になります。
でもパタゴニアの夏はお天道様も夜更かしで、私はまだ明るいうちから寝ています。