時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「アルゼンチン流 家作りのいろいろ」

やった〜!!ついに材木が届きました!
大工さんのおだてたり脅したり、なだめたりすかしたり、押したり引いたり、決して私たちでは出来ない手腕の御蔭です。ただ・・・材木が届いた翌日 から久しぶりの”大”雨。家じゅうのビニールをかき集め材木にかけましたが、届いた日に取り付けた床板などはびしょびしょと濡れてしまいました。
さて今回は家つくり進行報告はお休みして、アルゼンチンパタゴニア流家の基礎つくりについてご説明を。
まず家を作る時は、建てる場所の地面を水平になるように削ります。我が家の場合、かなりの斜面だったので家を建てる予定地の半分を削り、残 りの半分にその削った土を盛りました。ですから盛り土した部分がふかふかで、「平気平気」という大工さんの言葉を無視して、ひたすら土たたきをし て地面を固めました。直径10cm長さ1mの松の生枝をびっしり打ち込んで基礎を作るとよいと日本の大工さんからお聞きしたのです が、いかんせん人手と体力と時間が足り ずに水をまいてたたくだけになってしまいました。
こちらでも基礎の作り方は色々ある様ですが、一般的なのは柱を70cmほど地面に埋め、周りをコンクリートで固めるといういわゆる掘立形式で す。でもそれでは柱が腐るので私たちの家つくりをしている大工さんは、「最悪の方法だ」と言っていました。我が家の場合は写真の様に煉瓦を積み上げる部分 に鉄棒を入れた基礎を作りコンクリートを流し込みました。実はこの方法の殆どは鉄 棒を入れずにコンクリートだけ流し込むそうです。
地震のまずない国ですから、地盤が揺れるという発想がありません。また見えない基礎こそしっかりという考えも少ないので日本とは随分違う と感じました。
次に煉瓦を積み上げていきますが、我が家の場合は1mと2mの高さの所で鉄棒を家を一周させ(写真では2mの所の鉄棒が写っています)、 1m80cmの所はドアの部分を除いて鉄棒が入っていま す。これもこちらでは珍しい事だそうです。
家は木と煉瓦と粘土の3種類が主流です。本当は木の家にしたかったのですが、材木の値段が高くとても全てを木でつくる予算はありませんでした。ま たヨーロッパから入ってきた足長蜂が大繁殖し、木の家の壁に入り込んで巣をつくってしまう事が今大問題になっています。
粘土の家は魅力的ですが人件費が膨大だった事と、粘土の家つくりをしてくれる信頼出来る人を知らなかったのでやめにしました。ただこの粘土の家、 仲間が集まったら、小さくても良いから自分たちで作ってみたいと思っています。(一緒にやりませんか〜!)
私たちは大工さんの意見を聞きながら自分たちで家の設計をしました。ですからこちらの家つくりとは随分違います。まず、ひさしを1m出した事。冬 は雨の降るパタゴニアなんですが、何故かこちらの家には殆どひさしがありません。
次に窓を少なく小さくした事。こちらは窓を大きく沢山、見てくれの良い家が基本です。でも長い冬は熱効率が悪いし、直射日光の強い夏は温室の様な 暑さになってしまい決して住みよい家とは言えません。
他には家の半分は土間で決してコンクリートをはりません。また高床部分は縁の下に空気孔をつけました。出入り口は敷居を作り踏まれないように高く します。
本当はドアで無く引き戸、窓には雨戸をつけたかったのですが、自分たちでやる時間もないし、こちらの人では出来ないので諦めました。
囲炉裏は家の構造的にかなり難しくなってきました。でも諦めず、なんとしても作りたいと思っています。薪ストーブ風かまどは作ります。何時になる か分かりませんが、鬼瓦を焼き物で作ります。家を守ってくれ、かつ福を呼びよせる欲張りな私らしいシンボルを思案しています。
水タンク配置、排水を掘ったり、外にバイオトイレを作ったり、小道を整備したり、やらなければいけない事は山の様にあります。同時に薪準備、粘土 作りなど日常の仕事もあります。暇とか退屈とか思う時間はありません。でもその全ての作業が楽しく夢が広がります。資材購入ではストレス一杯です が、それも良い経験です。
家を作ろうと決心して、一歩踏み出して良かったです。変わらない状況もあるけれど、自分を励まし前に進む元気が出てきました。助けてくれる人も一 緒にやってくれる現れました。
辛い事も悔しい事も情けない事も寂しい事もまだまだあります。でも笑えるようになりました。
出来ない事は諦めるけれど、やれることは今精いっぱい楽しんでやっていこうと思います。
次回は屋根の付いた家の写真を見て頂けるかと思います。お楽しみに・・・。