時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「双子の流し台」


年末年始の国を挙げての夏季休暇。家つくりも必要な部品が入荷せず進みません
でした。
3月の末になってやっとやっと、10月末から注文していた台所の流しが届きま
した。
自分たちで設計したこだわりの家ですから料理用ストーブもドアも窓も規制品は
寸法が合わず、自分たちで作れるものは作り、時間的に無理な物は作ってもらい
ました。正直期待はしていませんでしたが、完成品として届く窓枠、ドア、柱に
至るまで、驚きの連続でした。
これだけのお値段を取っておきながら、よくぞここまで雑に・・・よくぞここま
でいい加減に・・・。
でも自分で出来ないのですから文句を言ってはいけませんし、ここは日本ではな
いのですから比べてもいけません。(空しいだけです)
そして台所流しも例外ではありませんでした。でも・・・・今回は驚きとともに
アルゼンチンらしい面白さ楽しさも一緒でした。
蛇口やホーロー部分などの必要付属部品を自分たちで購入、多すぎる前金と寸
法入りの設計図と共に家具職人さんに渡したのが10月の末。家つくりの基礎工
事や大工仕事 の忙しさにかまけて催促を怠ったら、案の定年末になってもなし
のつぶて。
夏季休暇で頭が一杯の職人さんたちに何を言っても無駄だと年明けまで 我慢し
ました。そして1月の中旬になって、「形や寸法を確認したい」と連絡があり、
もう一度図面を描いて渡しました。
家つくりの方は土間部分のたたき、床張り、囲炉裏つくり、雨どいつけなどなど
自分たちでやるべき仕事が山の様にあったので、「ええ〜!まだ作って いな
かったんだ。」と呆れましたが、2月中に出来上がれば良いか、と言う気持ちで
した。
ところが、流石アルゼンチン。信用しておとなしく待っていたら後回しにされ何
時まで待っても出来上がって来ません。交渉下手な私たちですから、友人の大工
さんに頼んで、彼お得意の脅したりおだてたりで催促をしてもらいました。2月
末にその大工さんから「台は出来上がったけど穴が なかった。だから、もう少
し時間がかかる」とメールがありました。意味不明でしたが彼に任せる事にしま
した。そして、3月になってやっとやっと大 工さんが運んで来てくれました。
二つ。
「えっ?」

腕が良く信用出来るとその職人さんを紹介してくれたのは大工さんです。信用し
て多すぎる前金も渡してありました。でもどうして二つ???

車から降ろされた流しを見て思わず噴き出しそうになってしまいました。
形は同じ。でも一つには一番大切な流し部分が無いのです。なんでまた?と思う
のは日本人だけでしょう。大工さんの言うには、二回目に渡した図 面は寸法だ
けで、流し部分の絵が描いてなかったから。やっと意味不明だったメールの謎が
解けました。でもちゃんと台所の流し台をお願いして、 ホーロー部分も蛇口も
渡しておいたのに・・・。

渡した前金は、この流し台では高すぎるけど、二つ届いて、一つは家具として使
えるんだから「まっ、良いか」と思えたので、めでたしめでたしで す。

職人さんが作ってくれましたが、扉の取っ手は無し。カンナ仕上げも面取りもな
し。当然排水ホースも蛇口も無しで自分たちで付けなければいけません。
台所用には防水ニスを買ってきて4回塗りました。片割れの方はたんすとして使
うので、クルミをつぶして布に入れ、それでせっせと磨きました。
来週には大工さんが来て取り付け、水回りの工事も終わる“予定”です。
家つくりを始める前は年内に完成と信じて疑いませんでしたが、今は何時かきっ
と完成するでしょうに変わりました。それに折角だから、もっと ゆっくりのん
びり家つくりを楽しんでいきたいと思っています。

パタゴニアに秋が訪れました。ポプラがライラックがもみじが果樹が黄色や山吹
色に色つき葉を散らし始めました。
アンデスの山も少しずつ赤く染まり始めています。これから4月末までが紅葉の
季節です。
きのこ狩りもりんごの収穫も楽しめます。寒くなりますが、とても奇麗な季節で
す。是非パタゴニアの紅葉を楽しみにいっらしてください。