時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「アルゼンチンでの家つくり 第2回」

資材屋さんから煉瓦やコンクリートなどが順調に届き、家つくりもどんどん進んでいます・・・と言いたいところですが、木材屋さんから木材が 届かず工事が一時中断しています。アルゼンチンではよくある当たり前の事です。
家つくりを決めた時、一番信頼できる大工さんに見積もりを取ってもらいました。そして姉からの援助と私の全財産を使えば何とかなりそうだったので 始めました。
ところが、アルゼンチンに20年暮らしていても、私の常識はまだかなり日本的だったと反省しています。
家の見積もりと言ったら、完成時にはすぐに住める状態だと思い込んでいました。ところが内装部分の金額は含まれていなかったのです。つまり、電気 の線、台所の備品(蛇口や排水管などの最低設備)、窓枠やガラス、ドア、シャワー設備、タイル・・・・ありとあらゆる基本的な設備を自分たちで購 入しなければいけなかったのです。流しやストーブは自分で買い足さなければいけないと思っていましたが、まさか電気の線やスイッチ、蛇口までそろ えなければいけなかったとは思いもしませんでした。お蔭で全くのすっからかんになりましたが、「無くなりゃ、後は入って来るのみ」と変な開き直り が出来ました。
幸いお願いした大工さんは知り合いで、信用信頼できる人なので資材購入のノウハウ、交渉などとても助けてもらっています。またアル ゼンチンのインフレは驚くばかり。一週間値上がりしなければラッキーという状態ですからアルゼンチンペソは貯めず、なるべく早く「物」 に変えるようにしています。
資材購入をしていて驚いた事は、たとえば洗面台を購入します。洗面台なので当然排水管に接続します。ところが、洗面台には穴が開いているだけで、 排水溝の金具は別売りなのです。家に帰っていざ取り付けと言う時に当然あるべき物がないので、またお店に買いに走らなければなりません。一事が万 事こんな状態なのです。でも細かい事は気にしない、自分でやれる事はやっちゃうアルゼンチンですから、その方がいいのでしょう。それに、自分の住 む家です。自分で考え選び決めていくのは、ある意味当然の事かも知れません。
さて肝心の家ですが、基礎のコンクリートが乾いたら、どんどん煉瓦を積み始め5日間で写真の所まで出来上がりました。この状態・・・いつ倒れても おかしくない気がして怖いです。実際強風で倒れる事もあるとか・・・。早く屋根を付けて安定させたいのですが、材木が届かないし、屋根を着ける前 に外と内の壁塗りをするそうです。
この冬、精神的に追い詰められてどん底に居た時、自分を奮い立たせるため決めた家つくりです。
春になって工事が始まってみると、あの時には考えられなかった状況が開け、明るい方向へと進んでいます。同時に一人では何もできないと言う当たり 前の事に気付き自分のいい加減さや弱さをひし ひしと感じています。
許す事、優しくなる事、感謝する事、反省する事。
煉瓦を一つ一つ積み上げていくように、私もそういう気持ちを積み重ねていこうと思っています。