時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「初雪」

朝からどんより曇っていましたが、それほど寒いとは感じなかったので、「今日も雨かなあ・・・」と思いながら犬たちと農場の見回りに行きました。 西風が強く、その風がアンデスの谷間からみるみる真っ黒な雲を運んで来ました。そしてあたりが急にうす暗くなったと思ったら、ボタ雪が空から舞い 降りてきたのです。
今年の初雪です。
ここエルボルソンはパタゴニアと言っても雪はあまり降りません。特にここ数年は暖冬で雪が舞っても積る事はまれになっていました。私は殆ど雪の降 らない地方で育ったので、雪は好きでした。
でも今年は暖冬を有難いと思い続けてきました。週3回豆腐の卸と日本語教室で朝うす暗いうちに一人で町に下りなければいけなくなったからです。雪 道の運転は経験 がなく、怖くてしたくありません。例えこちらが慎重に運転していても、ラテン系のノリで雪道をくるくる回りながら走ってくる無謀運転の車が多く、 事故が後を絶ちません。ぶつけられても「気にするな」ですまされてしまいそうですし、怒って文句を言っても逆切れされ、泣きっ面に蜂という状況に なるのが目に見えます。
後から後から空から舞い降りてくる大きなフワフワの雪を見上げ「ああ・・・明後日は町に降りなきゃあいけないのに・・・・。困った。嫌だなあ。」 と うんざりした思いでいました。
ところが、生まれて初めて見る雪に興奮した子犬の「お豆」が、喜んで走り回り始めました。雪の積もった草むらをウサギのように飛びはね、転げ回 り、時には下りてくる雪に向かってジャンプして・・・。すると「伏姫」もそれにつられて一緒にはしゃぎ始めました。最近はすっかり落ち着いたおじ さん 犬の「パク」までも久しぶりに二匹の追いかけっこに参加しています。その無邪気に喜ぶ姿が可愛くって、私の心も弾みました。
雪はなんて奇麗なの!雪はなんて不思議なの!雪はなんて楽しいの!
みるみる積ってゆく雪。踏みしめるときゅきゅと気持ち良い音と感触で答えてくれる。手に受け止めると見事な結晶で感動させてくれる。
明後日の事なんて心配するの止めた!
せっかく降り積もっている初雪を、楽しまなきゃあ。だってこの雪は今しか輝いていないのだから。
雲が晴れたら、アンデスの山は見事に雪化粧しているだろうな・・・やっぱり私はパタゴニアの冬が大好きです。