時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「私のエルボルソン所感」

アルゼンチンは10年に一回国勢調査があります。その調査で現在のエルボルソン市の人口は約25,000人でした。この数字は10年前の5倍です。 5倍の人口増加・・・これはエネルギー不足、ゴミ問題、森林伐採など住んでいると実感する驚異的な数字です。
さて今回はパタゴニアのこのエルボルソン市と言う町について住民の目から書いてみます。
エルボルソンはリオネグロ州ですが、お隣のチュブット州との境にあります。歩いてお隣の州に行けますし、チュブット州のラゴプエロ市やエルオジョ 市の住民はエルボルソンに買い物や仕事に来るなど、とても身近なお隣町です。けれども住民生活には大きな格差があります。それは税金の違いです。 自動車税、土地税、住民税・・・どれもリオネグロ州はチュブット州の倍以上、酷いものでは10倍(決して大げさな数字ではありません)の格差があ るのです。税金があまりに高いので払う人が少なく、市は何時も財政赤字で病院、学校などの公共施設の職員(医者や先生)は給料問題でよくストライ キをします。最近では突然の道路封鎖の抗議行動もあります。反対にチュブット州は税金を安くしてみんなに払ってもらい、それを還元するので道路も チュブット州に入ると歴然と良くなりますし、ストライキもありません。文化センターなどの公共施設、催しもののレベルも違います。こんなに差があ ることは住んでみて初めて知りました。
ただ税金が安くても問題はあります。一番大きいのは水問題です。一見緑が多く住みやすいと思われがちでも夏の乾季に川が枯れ、地下水が干上がってしまう場所がチュブット州(もちろんエルボルソンにもあります)には多くあります。アンデス山脈の万年雪も目に見えて少なくなってきています。長 期で滞在する場合は何をおいても水、特に夏場の水状況を良く調べて下さい。
パタゴニアの田舎町というイメージから物価が安いと思われがちですが、これも大間違いです。物価の高さはブエノスアイレス以上です。しかも都会ほど物が豊富ではありません。どうしても必要な物は現地よりも都会で調達してきた方が無難でしょう。
人口増加に関連がありますが、住宅難は深刻です。空きアパートを見つけるのは物件不足もあり、かなり至難の業です。貸別荘は冬季は月極めで割合安く借りられますが、観光シーズンになると容赦なく追い出されるか、観光客料金を請求されます。特に近年は避暑地として注目をあびていますから、年末年始に「行けば何とかなるさ」と軽く考え予約もなしに来ない方が良いでしょう。我が家も予約なしに突然来て頂いても受け入れられませんからご了承下さい。
観光でちょっと立ち寄るだけも良いのですが、折角なのでエルボルソンや近郊の町に長期滞在されるのも面白いと思います。アルゼンチンでも比較的治 安は良いです。ただし夜間外出や危なそうな場所には立ち寄らないのは常識ですし、貴重品(pcや携帯、デジカメ)をちらつかせない事も大切です。
エルボルソンには短期でも旅行者でも参加可能な講習会が沢山あります。英語、フランス語、ドイツ語などの語学教室、合気道、空手、テコンドーなど の武道、フラメンコ、アルゼンチンフォルクローレ、タンゴなどの舞踏、ヨガ、合唱、座禅、霊気、マッサージ、指圧、演劇、絵画、マクラメ・・・中 には良く分らない不思議なものもありますが、それはそれで楽しい経験になるでしょう。お勧め滞在時期は11月の花の季節と4月の紅葉の季節です。観光客も少なく落ち着いていて、多少寒いですが、乾季の埃っぽさもありません。
さてさて我が家も囲炉裏付きの別宅が完成し、滞在型のお客様の受け入れ体制も大分整いました。ホテルや別荘などの快適さ、便利さはありませんが、 パタゴニアの普通の田舎生活を体験して頂けると思います。長期大歓迎、畑や薪準備などの肉体労働をいっしょにして下さる方は食事無料提供します。 何でもお気軽にご相談下さい。ただし、突然の訪問は固くお断りさせて頂きますのでよろしくお願いします。
写真はエルボルソンのシンボル、ピルテュリキトロン岳とリオアスール河です。